日本の土木遺産

牛伏川フランス式階段工
永い年月をかけて自然と調和し、水がリズミカルに流れ落ちる独特な造形美
■ 永い年月をかけて自然と調和し、水がリズミカルに流れ落ちる独特な造形美

自然と調和した美しい流路 牛伏川フランス式階段工

近年整備された階段工下流の水路工水遊びの広場
■ 近年整備された階段工下流の
水路工水遊びの広場

松本市中心部から南東方向へ約10kmの標高約1000mの牛伏川最下流にある。自然石を積み上げて造られた大小の階段状の水路を水がリズミカルに流れ落ちる欧風でモダンな流路工は、日本で最も美しい砂防施設と称賛される。
元々この流域一帯は急峻な谷地で、寒暖の差が大きいために岩盤が激しく風化した「大化け」と呼ばれる荒地だった。そのため明治政府は1885年より内務省土木局の直轄工事として大規模な砂防工事を進めた。フランス式階段工はその末期にあたる1918年に人力のみで建設された。設計は当時の内務省技官“池田圓男(いけだのぶお)”である。フランス式と呼ばれる由縁は彼が欧州の留学先から帰国時に持ち帰った文献に掲載されていたフランスのデュランス川サニエル渓流に施工された砂防施設の図面を参考としたことに由る。
かつて荒廃し災害の絶えなかった渓谷は、人間の手によって美しい流路のある豊かな森として甦った。階段工の上流周辺には同時期に建設された堰堤や柵が点在し、斜面には植林された樹木が生い茂っており、その姿は施設内に敷かれた遊歩道を巡って廻ることができる。これら砂防施設一帯は、砂防の学習ゾーンとなっている。周囲には水遊び場やキャンプ場が併設され「牛伏川いこいの広場」として、地域の住民のみならず、児童の社会学習の場としても活用されている。

【アクセス】
車で松本市東南方向約10kmにある牛伏寺へ。正門右手の坂道を下り正面に見える牛伏寺砂防ダムの左手遊歩道を登り、小橋を渡って左へ進むと前方に施設の看板と駐車場がある。

【地図】
googleマップで牛伏川フランス式階段工の位置を確認する

「Consultant」218号
さらに詳しくご覧になりた方は、
<<「Consultant」218号 掲載記事へ

掲載記事をご覧になるには
Adobe Reader
が必要です。
「土木遺産 日本編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産 日本編」
ダイヤモンド社刊

建設コンサルタンツ協会