日本の土木遺産

安治川トンネル
自動車が通行していた頃のトンネル内部
■ 自動車が通行していた頃のトンネル内部

日本初の沈埋トンネル「安治川トンネル」

安治川トンネル内部
■ 安治川トンネル内部

大阪市営地下鉄中央線の九条駅から北西に延びる「キララ九条」は、庶民の香りのする商店街である。アーケードを抜け交差点を渡るとそこに5階建ての鉄筋コンクリートの建物が出現する。1944年に開通した日本初の沈埋トンネル、安治川トンネルの南側のエレベータ建屋である。トンネルは安治川の河底を横断し、大阪市此花区と西区を結ぶ延長80.6mの歩行者・自転車専用トンネルである。現在も多くの利用者がこのトンネルを渡っている。
完成当時の安治川トンネルは、両岸に歩行者用エレベータ、車両用エレベータ各2基と歩行者用階段を備えていた。最盛期である1961年の1日の交通量は、歩行者約8,500人、自転車約4,600台、自動車約1,200台であり、自動車だけは維持費の一部として使用料を徴収していた。
しかし、下流に国道43号線安治川大橋が開通すると車両通行量が減少し、またトンネル内の排気ガスやエレベータ付近での待ち渋滞が問題となってきたため、1977年に車両の通行は中止となった。現在は幅員2.4mの歩行者・自転車用通路(幅員2.4m)とエレベータのみが供用されており、車道と車両用エレベータは閉鎖されている。
地図を広げてみると、このトンネルが無かったら、歩く人は気の遠くなるような迂回を強いられることが分かる。エレベータを降りる時、操作する職員に利用者が必ず言う「ありがとう」の言葉が今も耳を離れない。

【アクセス】
大阪市営地下鉄中央線「九条駅」より徒歩1km。またはJR大阪環状線「西九条駅」より徒歩500m。

【地図】
googleマップで安治川トンネルの位置を確認する

「Consultant」232号

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「土木遺産 日本編」 <<コチラにも掲載されています。
「土木遺産 日本編」
ダイヤモンド社刊

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