オーストリアの低オーストリア州とシュタイヤーマルク州の州境にある小さな町ゼンメリングは、標高985m
のゼンメリング峠の斜面に這うように広がっている。このゼンメリングの前後41.7km、グロックニッツからミュルツツーシュラークまでのオーストリア国鉄の一部が「ゼンメリング鉄道」としてユネスコ世界文化遺産に登録されている。世界で初めてアルプス越えをした山岳鉄道でもある。この鉄道開設によってゼンメリングはウィーンの人々の休暇リゾート地として開発され、峠付近には小さなスキー場もいくつかできた。
オーストリア国鉄はベニス生まれの技師カール・リッター・フォン・ゲーガに設計を託し、1842年から6年間の設計期間を経て、1848年に工事に着手した。この区間には15のトンネルと16の陸橋がある。トンネルは火薬で爆破した箇所を人間の手で掘り進めた。陸橋は近辺の山々から採石したものをレンガ風に加工して馬車で運び、全て石積みで造られた。1854年、大型機械もダイナマイトもない時代でありながら、わずか6年という歳月で、当時鉄道で行ける世界最高地点(895m)を含むルートが完成した。ここには大自然の中で生きてきた力強さと人々の手で造りあげた温もりがある。途中にはこの区間で最も高い2層の陸橋で、旧20シリング紙幣の裏に描かれたカルテ・リンネ橋がある。
【アクセス】
ウィーンからグラーツ方面の列車に乗って南へ約80キロでグログニッツ駅へ。ここからブラームスゆかりの地ミュルツツーシュラークまでの約40キロの区間。
【地図】
googleマップでゼンメリング鉄道の位置を確認する
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