社会資本とは
 道路・鉄道・港湾・空港などの交通基盤施設、電話・衛星通信・コンピュータ通信を支える光ファイバーネットなどの通信基盤施設、上下水道・都市公園・教育・文化・福祉厚生施設などの生活基盤施設、河川・砂防・海岸などの国土保全防災施設、石油・ガス・電力の生産及び供給のエネルギー関連施設、農林漁業基盤施設、工業団地・オフィス街等の生産基盤施設などを、社会資本(Infrastructure)と呼ぶ。
 これらは人々が生活を営み、産業が生産を行うのに必要不可欠な基盤施設である。
東京湾アクアライン
北陸新幹線
東京国際空港
 社会資本は国民の誰もが、その効用を享受する社会共有の資産である。そのため、社会資本の多くは公共投資によって整備される。
 社会資本整備をより理解するために、最近10年間で国内において整備された事例を示す。
最近10年の社会資本整備の例
年度完成した社会資本
平成
元年
・新高松空港開港
・横浜ベイブリッジ開通
2年・京葉線全線開業
・青森空港開港
3年・千葉都市モノレール開業
・七ヶ宿ダム完成
4年・山形新幹線開業
・池間大橋(宮古島〜池間島)開通
5年・東京国際空港(羽田)新ターミナルオープン
・東京港連絡橋(レインボーブリッジ)開通
6年・関西国際空港開港
・広島新交通アストラムライン開業
7年・青森〜鹿児島・宮崎間2,150kmの縦貫道が完成
・臨海新交通「ゆりかもめ」開業
8年・東京国際展示場(東京ビッグサイト)開業
・高速道路開通延長6,000km突破
9年・東京湾アクアライン開通
・秋田新幹線、北陸新幹線開業
10年・明石海峡大橋開通
・大館能代空港開港


わが国の社会資本整備の変遷
 社会資本整備は、わが国の近代国家形成や経済成長を支えるのに重要な役割を担い、どの時代においても国民生活を根底から支えてきた。
 時代ごとに、多くの社会資本整備が国家的事業として実施され、国民的努力のもと大きな成果をあげてきた。
戦前の社会資本整備
 戦前までの社会資本整備は、独立国家としての地位を確固たるものとするため、軍事力の増強を主目的として認識されてきた。
 この時代は、鉄道の整備が精力的に行われるとともに、氾濫防止・農業生産拡大・舟運の確保などのための河川改修工事も少なからず実施されるなど、富国強兵のもと生産効率に重点をおいた施策であったといえる。


戦災復興から高度成長へ
 戦後の社会資本整備は、「戦災都市の復興」を目指した土地区画整理事業の実施とそれに伴う道路整備に始まる。
 それに並行して、経済復興を進めるための食糧増産対策を目的とした土地改良事業等農林水産業への投資が増大することとなった。
 また、カスリーン台風に代表される大型の台風等の襲来が、人命や農産物への甚大な被害をもたらすこととなったため、治水対策の必要性も高まり、さらには、国力の増強を目的として、工業化を進めるための電力開発(水力発電)などの水資源開発が実施されることとなった。
 こういった戦後の国土整備の緊急対策を経て、この時期、その後の“社会資本整備の骨格”がかたちづくられてきたといえる。
 その後、1960年に国民所得倍増計画ができ、わが国の社会経済は高度成長の時期を迎えることとなる。
 現代社会に向かうこの時期は、国民の所得水準の向上や高度経済成長を目標に、経済発展基盤としての幹線道路や新幹線鉄道の整備が精力的に行われた。
戦後の日本の道路状況(昭和20年代)

東海道新幹線の開通(昭和39年10月)


バブル経済崩壊による低成長期の到来
 高度成長期の急速な経済成長の影では、公害、住宅問題が大きな社会問題として取り上げられるようになってきた。
 こうした社会問題への対応が十分に果たされないまま平成初期のバブル経済の崩壊により経済成長も終焉を迎え、わが国は低成長時代に至ることとなる。
 これに併せて、都市と地方の格差の拡大、過疎・過密化の進行といった従来の社会構造自体の歪みが表面化し、その問題は深刻化してきている。
 一方、社会資本整備においては、経済活動の低迷化の中で、その投資と整備効果における評価が従来にも増して厳しく求められることとなってきた。
バブル崩壊により発生した都心部の虫食い地


社会資本整備の効用
 近年、事業主体である国・自治体の財政収支の悪化、及び、整備の目標・効率に対する国民の批判等により、事業効果についての説明責任が事業者に強く求められている。
 このため、事業に対する費用対効果を事前に予測することが極めて重要になっている。
 整備された施設が機能して、効率性や生産性等が向上する効果を施設供用効果(ストック効果)と言う。
 生産の効率・国民の生活水準が向上し、さらに、環境が改善され長期的に国民の快適性、ゆとりを創出する。
 また、社会資本整備のための投資が行われることにより、建設業のみならず関連産業の生産活動が誘発されて生ずる経済効果を需要創出効果(フロー効果)と言う。
 原材料や労働力に対する需要が増大し、その結果、雇用の創出や所得の増加が生じ経済活動が活性化する。
 社会資本整備は、本来的には前者のストック効果を目的として行うものである。
 しかしながら、公共投資の必要性を、短期的な経済政策の一部として用いられた後者のフロー効果に着目して論じられることもままある。
 フロー効果は、本来、短期的効果であり、産業各分野に広く波及していくが効果の時間は長くは持続しない。
 従って、公共投資の必要性は、基本的にストック効果と整備費用ならびに維持管理費用のバランスから論じられなければならない。
 ストック効果は、貨幣価値に換算して計測できるものと換算が困難なものに分類できる。
 換算できる効果とは、施設の利用などにより何らかの経済活動に効用を及ぼすものである。
道路の整備による走行時間短縮、交通事故減少、騒音の減少など、今日計測が試みられているものは、この効果を計測しているものがほとんどである。
 一方、換算が困難な効果とは、走行の快適性、景観の改善、水質が保全され河川環境の向上が図られるなど、主に生活環境や人間の意識に影響を及ぼすものである。
 現在、十分に計測手法が確立されていないものが多く、各方面で精力的に研究が行われている。
 参考のため、道路の投資評価における効果の分類例を表に示すが、貨幣価値に定式化して換算できる項目は全体からみると少ないのが実状である。
道路整備における投資効果の分類例
効果項目貨幣価値への計量が
定式化されている項目







道路利用走行時間短縮・走行費用減少
交通事故減少
走行快適性の向上
歩行の安全性・快適性の向上
沿







環 境大気汚染
騒音
景観
生態系
エネルギー(地球環境)
住民生活道路空間の利用
災害時の代替路確保
交流機会の拡大



公共サービスの向上
人工の安定化
地域経済建設事業による需要創出
新規立地に伴う生産増加
雇用・所得増大
財・サービス価格の低下
資産価値の向上



財政支出公共施設整備費用の削減
租税収入地方税
国税



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新たな国土のかたちを求めて国づくり、都市づくりのコンサルタント