わが国は四季の変化に富み豊かな自然に恵まれているものの、

欧米諸国に比べて特殊な国土構造と社会経済条件を有しているため、

社会資本の整備に多大な投資が必要となる悩みを抱えている。



脆弱な国土
細長い国土、平地が少なく7割は山
 わが国は南北に細長い島国であり、列島の中央を急峻な山脈が縦断し、国土の75%を山地が占めている。
 わが国と同程度の面積を有するイギリスやドイツは、はるかに平野が多い。
 しかもわが国は山地によって分断されているため、道路や鉄道等の建設にあたっては、数多くの長大なトンネルや橋梁が必要となり工事費の増大を招いている。
高速道路における地形特性の比較
世界有数の火山国、地震国
 わが国は、世界の活火山の約10%が存在し、世界の地震の約10%が発生する有数の火山国・地震国である。阪神・淡路大震災(平成7年1月)をはじめ、雲仙・普賢岳の噴火による島原災害等、大規模な地震、火山災害が頻繁に発生し、多くの人命と財産を失う事態を招いている。大規模な断層や破砕帯に発生する地震や土石流や地滑り等の土砂災害発生の懸念もあり、国民の生命と資産を守るために、耐震性の高い施設を整備するとともに、土砂災害を防ぐ砂防施設の整備が必要である。
地震位置図
阪神・淡路大震災
軟弱な都市の地盤
 平野の少ないわが国では、大都市はほとんど例外なく沖積平野に立地している。沖積層は、軟弱な地盤で地震にも弱いため、地下鉄等の地中構造物や高架橋の基礎を建設する上で厳しいハンディキャップを負わされている。
わが国における沖積平野における人口と資産の割合
地形国土面積
の割合
人口比率資産比率
沖積平野10%49%75%
その他90%51%25%
多発する豪雨
 わが国の河川は、距離が短く急勾配という特徴を持っている。このため梅雨前線や台風による豪雨があると雨水は一気に流れ下り、洪水となりやすい。
 また、多くの都市は、洪水時の水位よりも低い区域にあるため、洪水が発生すれば大変な被害に見舞われる。
 こうした河川の氾濫を防ぎ、大切な人命・資産を守るためにダム、調整池や遊水池、放水路、堤防等の整備が必要となる。
 また、わが国の年間平均降水量は世界平均の約2倍であるが、人口1人あたりでは世界平均の1/5に過ぎない。
 降雨は、梅雨期及び台風期に集中し、流出も早いため河川流量は一定せず安定した水利用が難しい。
 わが国は常に渇水の危険にさらされており、ダムなどによる水資源の確保と地下水の保全対策が課題となっている。
勾配が急な日本の河川
勾配が急な日本の河川
勾配が急な日本の河川
 また、わが国の年間平均降水量は世界平均の約2倍であるが、人口1人あたりでは世界平均の1/5に過ぎない。降雨は、梅雨期及び台風期に集中し、流出も早いため河川流量は一定せず安定した水利用が難しい。わが国は常に渇水の危険にさらされており、ダムなどによる水資源の確保と地下水の保全対策が課題となっている。
年間平均降水量と人口1人当たり降水量
多くの地域での豪雪
 わが国の国土の1/2は、豪雪地帯となっている。そこに暮らす人々の生活と経済活動を維持するためには、毎年継続的に費用を投入して、雪崩や吹雪対策、除雪や融雪対策などを行う必要がある。
豪雪の中での生活と経済活動
侵食の進む海岸
 わが国の海岸線の総延長は、地球の円周の約9割に相当する34,000kmもある。これらの海岸線は、台風や冬季の風浪などの厳しい自然条件にさらされており、過去15年間で約2,400haもの国土が失われている。様々な災害から海岸を守り海岸の侵食を防止するためには、海岸保全施設の整備が必要である。
各国の単位面積あたりの海岸線延長


過疎と過密の社会
 現在、わが国の抱える深刻な問題として、“過疎と過密”という社会構造の不均衡の問題があげられる。
 従来の社会資本整備は、国土の繁栄と社会・経済活動の利便性向上を目標に押し進められてきたが、産業構造の変化に伴い、地域格差が表面化し、首都圏及び大都市圏への一極集中による“過密”と地方中小都市や山村、農漁村地域の“過疎”という問題を抱えることとなった。
地域格差の実態(県民1人当たり所得ランキング)
上位ランク群
都道府県
1人当たりの所得
(円)
下位ランク群
都道府県
1人当たりの所得
(円)
東京都4,255,000沖縄県2,149,000
愛知県3,641,000宮崎県2,214,000
埼玉県3,365,000鹿児島県2,277,000
滋賀県3,337,000島根県2,403,000
大阪府3,261,000高知県2,442,000


全国平均3,118,000
過疎の社会
●地方都市における都市活力の低下

 近年の情報化、交通アクセスの高速化により時間距離の問題は大きく改善されているが、一方で地方都市の都市活力低下の問題は深刻になってきている。
その要因としては、都市活動を支える道路、上下水道といった社会資本整備の立ち遅れと、中心市街地の空洞化、人口流出による地域コミュニティの弱体化などがあげられる。

●山村・農漁村の衰退

 わが国の第一次産業を担う山村・農漁村部においては、産業構造の変化、安価な農産物の輸入増の影響を受け、生産・収穫量は年々減少傾向にある。
 その結果、労働人口の流出と地域人口の減少が生じ、山村・農漁村の過疎化、高齢化が進み、深刻な問題となっている。
 また、地方によっては、バブル時期の乱開発の影響による自然環境、田園風景の破壊が深刻化しており、改めてそれらの保全と復旧が課題となっている。

過密の社会
●人口・資産の氾濫区域への集中

 わが国の国土形態の特性として国土全体の75%が山地であり、残りの25%の平地、特に10%の沖積平野を中心として多くの人口集積・都市化が進んできた。
 沖積平野の多くは氾濫区域であり、ここに人間活動、人命、社会資産及び個々の財産等が集中していることになる。
 洪水や地震などの自然災害に対するわが国の脆弱さは、その点からも、深刻な問題といえよう。

●首都圏における機能集中

 高速交通と広域ネットワークの整備は多くの効果をもたらし、経済活動の活性化を促す要因となったが、反面、首都圏及び大都市部への機能集中を拡大し、多くの弊害が生ずる結果となった。
 首都圏において、将来予測される地震災害などから、国家の中枢機能の安全を保障することは重要であり、リスクの分散化を図ることが必要となる。
 首都機能の移転など課題は多い。

●高い地価と強すぎる私的権利意識

 都市部近郊に見られる住宅密集地区では、避難路として使える道路が整備されていないなど、防災面及び生活環境面からも問題は多い。
 しかしながら、こういった地区では、高い地価と土地所有者や居住者の強すぎる私的権利意識により、社会資本整備が思うように進まないのが現状である。
 市民のモラル・民度としても個人の権利尊重を重んじるあまり公共公益的思想がわが国の風土としてなかなか根付かないという悩ましい一面が見られる。




社会資本の整備とその効用社会資本の整備はもう充分か?
新たな国土のかたちを求めて国づくり、都市づくりのコンサルタント