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10000000000単価(円/t)100000000010000000010000000100000010000010000プラチナ金パラジウムDRAMその他:33銀豚肉鶏肉工業製品1449ウイスキー牛肉生糸毛糸果実酒焼酎日本酒ビール豆類小豆天然ゴム発泡酒鉛米22鋼材石油砂糖芋類大豆生乳13 389古紙セメント鉄くずミネラルウォーター1000上水道上水道(原価)100海水淡水化工業用水下水道下水道(原価)10(造水コスト)農業用水1101001000100001000001000000市場規模(億円/年)(作成:村上道夫)日本の仮想投入水総輸入量338925日本への品目別仮想投入水量(億m 3 /年)牛乳・乳製品22 13工業製品鶏肉252024総輸入量:640億m 3 /年日本国内の年間灌漑用水使用量:570億m3/年(三宅、2002、佐藤、2003、Oki et al., 2003)(日本の単位収量、2000年度に対する食糧需給表の統計値より)140大麦・裸麦36豚肉牛肉米小麦94145とうもろこし大豆121図3 重さ1トンあたりの価格(円)と日本におけるおおよその市場規模(億円/年)。新聞やWebなどから著者等作成図4 主要な穀物や肉類などに伴う日本の仮想水輸入量。日本の単位収量、2000年度に対する食糧需給表の統計値より算出された(佐藤、2 0 0 3より)コストの上乗せで済むが、水道水であれば原価には関係なく輸送費が運んだ後の水の価格を決めることになる。流体を安価に輸送可能なのがパイプラインであり、重さあたりではやはり安価な資源である天然ガスや原油と同様、水もパイプラインを敷設して輸送するしかコストを抑える方法はない。水道専用としては大規模な小河内ダムによって作られた奥多摩湖には約1億8,500万m 3の水が貯められるが、満杯の水の価値は水道料金で換算しても300億円あまりに過ぎない。これに対し、1m 3の金は比重が約19で1gが5,000円だとすると約1,000億円近くの価値がある。生態系に多少なりとも影響を与え、大規模なダムを作っても、溜められる水の価値は1 m 3の金の1/3なのである。このように、水資源を安定して利用するために効率よく輸送したり貯留したりするためには、大規模なインフラ整備のための初期投資が必要となる。逆に言うと、慢性的な水不足に悩む世界の地域は、気候的に水が足りないのではなく、必要な水質の水を必要な量だけ安定して供給する社会基盤(インフラ)施設が整っていないのである。インフラが水不足を解消現在では日本は水に恵まれた国である、と一般に考えられているのも、貯めたり運んだりして水の時間的、空間的な偏在を平準化する貯留施設や水路、取水施設、さらには安全な水を届ける浄水施設、給水施設が長年にわたる投資の末に概ね整備された結果に他ならない。日本でも高度成長期には、それぞれの地域の水供給能力には関係なく全国の都市に人口が流入して水が足りなくなり、1964年には東京都も大渇水に見舞われ、東京オリンピックの開催が危ぶまれたほどであった。日本の降水量は世界平均の約2倍であり、しかも、夏も冬もそれなりに雨や雪が降るという点では確かに恵まれているが、人口密度も高いため、1人あたりの水資源量では世界平均の年間約8,000m 3 /人の半分以下の年間約3,200m 3 /人に過ぎない。特に、関東臨海部では年間約250m 3 /人と、慢性的な水不足に悩む北京市の年間約120~130m 3 /人の2倍程度の値である。それなのに普段の暮らしでなぜ水で困らないかというと、関東臨海部の場合には、多摩川の水に加えて利根川上流部に貯水池群を設け、河口には堰も設置して最大限利用可能な水資源を周囲からかき集める仕組みを築いたからである。なお、人類の幸せのためならば自然に多少負荷をかけてもよい、というのはいわば20世紀型の考え方であり、生態系が健全に保たれている状態が人類にとっても好都合である、という風に生態系サービスを尊ぶのが21世紀の考え方である。生態系サービスの恩恵を将来にわたって受け続けられるように、注意して水を利用していく必要がある。現在すでに慢性的な水不足で困っている途上国の都市では、人口増加や経済発展に伴って増大する水需要を満たすように水資源開発を進めざるを得ないであろうが、地域で供給可能な水や食料、安全な土地面積などに応じた「環境容量」に人口規模を抑える、という012Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015