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特集水の世紀?水ビジネスが世界を変える?2世界の水問題楠田哲也KUSUDA Tetsuya九州大学/東アジア環境研究機構特別顧問/名誉教授/工学博士世界の水問題は、水利用可能性を表す指標「水ストレス」をとおして俯瞰すると見通しがつく。中国黄河流域で実際に生じた地下水位の低下等の問題を概観するとともに、水利権市場の整備などのすぐれた水マネジメント手法を採用したオーストラリアの事例を紹介する。水資源の本質降水量は時間的にも空間的にも偏在している。降水量から蒸発散量を差し引いた水資源賦存量も同様である。水資源を海水まで拡大しても空間的に偏在している。ヒト以外の生物は与えられた環境の中で生存リスクを受容しつつ生き延びているが、ヒトは生存リスクを減少させるとともに生活を快適に、そして僅かながら他の生物に配慮しつつ、種々の工夫を凝らして生きてきている。その工夫とは水資源の時空間偏在を平準化するための貯水施設・送水管渠・水質変換施設、さらに水の使い方等である。人為的に変わりゆく社会環境のみならず気候変動のような長期的現象にも対応を迫られている。水資源となり得る水は、その質が利用目的に適うものに限られる。河川水や湖沼水を直接利用する灌漑用を除くと取水された水は目的に適わないことが多いので、水質変換が必要となる。水質変換の実施可能性はその用途における費用対便益に依存する。また、需要量は人の営み、つまり、その地域の文化、生活形態や習慣、これらを生み出している気候に依存する。最貧国でも一人一日の水利用量として60lは欲しい。GDP(生活水準)と水利用量には生活形態等によるばらつきはあるものの、GDPが上昇すると水利用量も増加する(図1)。地域の水利用量は人口に比例するので、都市への人口集中は供給制約の下では一人一日当たりの水利用量を減少させることに帰着する。さらに、我が国の水田地帯の都市化は水使用量を減少させたことが知られている。水利用は水質汚染を生み出すだけで水は消費されないといわれるが、これは生活用水や工業用水使用の場合であって、灌漑用水ではほぼ半分が蒸発散してしまう。開発途上国におけるインフラの不十分さによる水不足は我が国の人口減少市町村の将来と同根である。水問題の特性水問題にはtoo much waterとtoo little waterの両者がある。前者は洪水や津波に代表される量の問題で、後者は飲料水や灌漑用水の不足であり、量と質が問題となる。too much water問題の発生は社会インフラ(治水ダムや堤防など)の計画値と時間単位、日単位の降水量に依存し、too little water問題は供給を上回る需要により生じる。この供給量は、その地域の利用可能な貯水量(ダムや湖沼の貯水量、積雪量や地下水量)、河川水量、送水機能、水質変換性能に左右される。図1 GDPと都市用水使用量(出典:平成16年版『日本の水資源』)014Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015