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写真3魚つかみ図1かばたの仕組みかつて日本のどこにでもあった「春の小川」は、高度成長と共に生活雑排水や産業排水が流れ込み、山林は無防備に伐採され、気がつけば自然破壊と水質汚染に悩まされた。針江大川も上下水道が整備されていない頃は生活雑排水が流れ込んでいたが、それでも昔ながかみらに「かばた」を使う事で人々は、「上から流れ来る水はしも下へと流れる。当然汚いものを流すと下流に汚いものが流れ着く。水は水路を通って隣家の『かばた』に行くのだから、上の人は下にいる人の事を思い、汚した水を流してはいけない」。上の「かばた」は思いやりといたわりの水、下の「かばた」は安心と信頼の水と、無意識のままに構造が壊れることはなかった。水の大切さは常々から知らされているのだ。現在、生活雑排水は下水道に流れ、「かばた」で自噴する純粋な酸素の多い湧水と雨水が地区の水路を巡り、以前よりきれいな水が琵琶湖に流れ、生態系にも良い環境をつくりだしている。「かばた」の大切さを学ぶ「かばた」が世界に発信されたのが平成16年1月放送のNHKのハイビジョンスペシャル番組『映像詩里山~命めぐる水辺』(撮影監修は写真家の今森光彦)。水辺の四季折々を舞台にした美しい映像がきっかけで、「かばた文化」に興味をもった多くの人々が国内外から訪れるようになった。「かばた」の存在を意識せず普通に生活を営んでいた私たちは、この状況に驚きと戸惑いを感じた。訪れる人々の路上駐車が増え、見知らぬ人にのぞかれているような不安感がつのり、誰かが安全管理をしないといけない状況となった。そこで「針江生水の郷委員会」を立ち上げ、かばたを見学に訪れる人々の案内をすることとなった。訪れる人から「各家に湧水が自噴していること自体が凄い。水は大切なもの。かばた文化を大事に守ってください」と言われたことで、後世に残していく事の必要性を感じるようになった。針江生水の郷の活動が認められ、平成18年に「豊かな村づくり」農林水産大臣賞を受賞。平成20年に「平成の名水百選」に選定。平成21年に中学校道徳の教材本に『「川端」のある暮らし』として掲載。平成22年に国の重要文化的景観「高島市針江・霜降の水辺景観」に選定。平成23年に「第4回淡海の川づくりフォーラム」グランプリ受賞。外国向けの政府発行機関紙『Highlighting Japan』に「水の宝物のお裾分け」として英語で掲載。平成25年には環境省の「エコツーリズム大賞」に選ばれる。また、針江生水の郷委員会はフランス・中国・台湾・韓国・イギリスからのTV取材や小・中・高・大学の体験学習の受入など、国内外から訪れる人々の案内を行っている。「かばた」は水を循環させる知恵そとうち「かばた」は、外かばた(家の外)と内かばた(家の中)がある。いずれの場合も地面に鉄管を打ちこむと地下10~20mから「生水」が自噴してくる。水温は年間通じて約13℃で、夏は冷たく冬は暖かい。もといけつぼいけ元池は生水が涌き出るところで、その生水が壺池に溜られ、そこで下洗いした野菜や果物を浸けたり、食器を洗ったりする。夏でも麦茶を沸かしたやかん・まるごとスイカ・夏野菜・ビールなどを浸けると10分もあればはたいけ冷える。次の端池では、野菜に付いた土を洗い落とし、ご飯粒・食べかす・汚れた鍋を浸け置くと、魚(主に鯉)が食べてきれいにしてくれる。鯉は水路にも放しているが、鑑賞用ではなく、水の浄化に一役かってくれる大切な家族の一員である。「かばた」からきれいになって流れ出た水は、水路をCivil Engineering Consultant VOL.267 April 2015019