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特集水の世紀?水ビジネスが世界を変える?4水に価値をつける技術山本和夫YAMAMOTO Kazuoアジア工科大学副学長/東京大学教授(一財)造水促進センター理事長水に価値をつける技術である造水技術。これが水ビジネスとして成立するのは、「高い水を買ってもよい」という購入者の支払い意思との兼ね合いによる。淡水資源の不足している中東では、まさに「造水技術」である膜関連技術を使った海水淡水化がビジネスとして成立している。水ビジネスの枠組み水そのものに価値をつけるという観点から、ここでは膜関連技術、特に海水淡水化技術としての逆浸透(RO:Reverse Osmosis)および生活排水再生利用技術としてのMBR(Membrane Bioreactor)-ROに絞って事例を紹介する。水に価値をつける造水技術の詳細については既刊1)を参照されたい。もちろん膜が全てではなく技術は多様である。まず立ち位置を明確にするため、分かり切った話から始めたい。水は我々の生命、生活、産業を支える基本財である。同様な基本財である空気はタダであるが、水はタダではない。人間地球圏で空気は遍在するが、空気と共に地球を駆け巡る水蒸気は別にして、太陽エネルギーを駆動力にして海から蒸散した水蒸気が陸域で再び凝縮し降水となり、我々に利用可能となる過程で、水は時空間で偏在してしまうからである。山紫水明の地である日本でも、古来、水争いは絶えなかった。その歴史を経て、我が国の河川を流れる水には水利権が付いている。取水は自由ではない。公は、ベーシックヒューマンニーズである安全な水を、安価かつ安定して供給する責務を負っている。これが日本の水道行政の基本である。一方、私水である地下水は、自由かつ安価な水として産業用途にかつて過剰に取水され、深刻な地盤沈下を引き起こした苦い経験がある。野放しにしてはいけない。我が国では、工業用水法による地下水取水規制が功を奏して、地盤沈下は沈静化し、例えば東京都区部は地下水位の回復が顕著であり、今は地下構造物の浮上問題を抱えているところもある。しかし、沈下してしまった地盤は回復しない。現在も世界に目を向ければ、同様な過剰取水による深刻な地盤沈下問題や塩水障害を抱えているところが至るところにある。実質的に回復不能ということは、環境修復費用が無限大ということである。未処理の排水による水環境汚染は修復可能であるが、一般に莫大な費用がかかる。安きに流れて取り返しのつかない事態を防ぐため、公は水管理の制度を確立し、公民連携して未然防止対策のための社会コストを負担し、結果的に環境保全のためのコスト最小化を図らなければならない。水ビジネスは、このような枠組みの中で展開されるビジネスである。要は、儲けなければいけないが、儲けすぎてもいけない商売である。投機商品であってはならない。水の値段さて、その水の大雑把な値段はいくらか。先日、タイの首都バンコクのコンビニで買ったペットボトル1.5lで40円(1バーツ=3.7円換算)、1m 3では約2.6万円にもなる。こんな高価な水が買われている。安全や安心を買うために、それだけの支払意思があるということである。これに対し汚水処理への支払意思は薄弱である。自分が出した汚水の処理に金をかけることは考えもしないが、スマートフォンには金をかけるという現象が世界を席巻している。これは制度と教育の問題である。ペットボトル飲料水の場合、高度処理のためのコストは殆ど問題にならない。ROも普通に使われる。すなわちビジネス022Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015