ブックタイトルConsultant267号

概要

Consultant267号

表1大型海水淡水化設備納入・受注実績運転年国都市設備能力（m 3 /日）プラントエンジ膜メーカー1998サウジアラビアヤンブ128,000三菱重工東洋紡2003アラブ首長国連邦フジャイラ170,000日東電工2003シンガポールチュアス136,000東レ2007サウジアラビアシュアイバ150,000東レ2008サウジアラビアラービク192,000三菱重工東洋紡・日東電工2008アルジェリアハンマ200,000東レ2009サウジアラビアシュケーク216,000三菱重工東洋紡2009スペインバルセロナ200,000日東電工2010オーストラリアメルボルン440,000日東電工2011バーレーンアル・ドル218,000東レ2012アルジェリアトレンセム200,000日東電工2012オーストラリアアデレード300,000日東電工2014アルジェリアベニ・サーフ200,000日東電工2014アルジェリアマガター500,000東レ2 0 15（受注）サウジアラビアシュアイバ91,200ササクラ（蒸気圧縮式多重効用缶型）注：造水促進センター調べ。日本企業プラントエンジ10万m 3 /日以上。プラントエンジ空白欄は外国企業（膜メーカーのみ日本企業）の場合で20万m 3 /日以上は適用する技術云々の問題ではなく、投資と販路の問題であり、まさに民に任せるビジネスである。我が国のいわゆるビル内の中水道も高値が許容されている。条例による水再利用設備導入推進と、大口需要者への上下水道料金逓増制（合計800円/m 3でも驚かない）という政策的インセンティブにより、MBRを導入し「500」円/m 3のオーダーの造水コストでも民のビジネスとして成り立つ分野である（オーダー値であることを明確にするため「500」円と表示）。このようなケースは特殊で、公によるインセンティブがないと成立しないため、そのままの海外展開は難しいと考えられるが、水が決定的に不足している所ではそうでもない。タイの廃棄物処分場サイトで実施した、ごみ収集車から集めた新鮮なごみ浸出水からの水再生デモンストレーション実験では、コンテナタイプ可搬型MBR-ROという最先端水処理技術を導入しても経済的に成立する結果となった2）。このサイトには水供給パイプラインが来ておらず、ごみ収集車の洗車にもタンク給水車から水を買わざるを得ず、その値段が370円/m 3であった。水を車で遠くから運ぶと燃料代などの輸送費が高くつくのである。タイ湾にあるサメット島では本土から水を20lのボトルに詰めて船舶で輸送して来るが、その値段も大体同じで、サメット島内のあるホテルでは自前でRO海水淡水化装置を導入して造水している。その方が安いのである。しかし普通はそこまで高くない。我家がある東京某市での支払い実績は、水道料金145円/m 3、下水道料金65円/m 3、合計約210円/m 3である。水道事業は独立採算制だが、建設償還費が大きい下水道事業は税金投入がなければ成り立たない事業であることがよく理解できる値段設定である。筆者はバンコクにも住んでいる。その集合住宅での支払い実績は、水道料金70円/m 3のみで下水道料金は徴収されない。タイでは水道使用量を基にして下水道料金を徴収する仕組みが整っていない。従って、一人当たりの名目GDPが5,600米ドル強の中所得国タイでも、下水道事業の現状は完全な公的資金による事業である。バンコクを離れ地方に行けば、水道料金は約20円/m 3程度である。バンコク近郊の工業団地の用水供給事業であると、民営かつ従量制で約70円/m 3となる。バンコク周辺1都7県以外の地下水規制の緩い地方での工業用水供給事業となると、地下水利用で約10円/m 3である。ちなみに責任水量制を取っている我が国の工業用水道による工業用水料金は、その建設時期により大きく異なるが、大雑把に「50」円/m 3である。原水水質が既に良好な場合を除き、高度水処理「50」円/m 3が水に価値をつける技術の相場といえる。海水淡水化ROも水再生MBRも例外ではなく、そこで勝負できなければ海外でのビジネス展開も安閑としてはいられない。海外で展開する大型海水淡水化技術淡水資源の不足に悩むところでは海水淡水化がビジネスとなる。表1は、海外のRO海水淡水化大型施設について、日本企業（プラントメーカー、膜メーカー）の納入、受注実績例である。サウジアラビア・ラービクの例は、大型直列3段RO（図1）で、冷却水用高純度造水設備として注目を集め、大型高純度海水淡水化市場でも蒸発法に代わるものとして評価されている3）。海水淡Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015023