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写真2下水浄化センター中央操作室写真3下水南浄化センターでの点検作業その更新時代を迎えようとしている。加えて、東日本大震災を教訓とした耐震対策や豪雨対策など危機管理面の課題にも対応が求められている。また、人材面では、高度経済成長期に採用した技術系職員の大量退職時代を迎え、事業運営や施設の設計建設の監理を担う人材の確保(量)と技術の継承(質)という課題が待ったなしの状況となっている。更に、資金面では、人口減少や水需要の減少に伴う料金収益の減収が課題となっており、一部の公共セクターでは施設整備のために過去の高金利時代に起債した債券の償還も負担となっている。翻って水ビジネスを担う民間セクター側を見ると、欧州の水メジャーのように事業運営に係わるサービスを一社単独で一貫して元請できる国内企業は皆無に近い。これまで上下水道施設が公共事業として部分的に分割して民間委託がなされてきた経緯もあり、「施設計画や設計」「施設建設や補修」「施設の運転や維持管理」「メーター検針や料金収納・窓口業務」「各種部材や機器製造」といった分野個別に事業展開している民間企業がほとんどである。また、事業運営や管路の分野は、そのほとんどを公共セクターが直接運営しており、民間セクター側に人材や技術、ノウハウが乏しいのが実情である。このような背景の下、わが国の上下水道事業を持続可能なものとするために、公共と民間のパートナーシップ(PPP:Public Private Partnership)の流れが進展している。具体的には、指定管理者制度や第三者委託制度による長期包括的業務委託や、PFI(Private FinanceInitiative)方式や公設民営(DBO:Design BuildOperation)方式を活用した施設更新事業が増加しつつあり、公共施設等運営権制度(コンセッション方式)による事業運営なども検討されている。今後の更なるPPPの進展により、公共、民間双方のセクターがメリットを享受し、win-winの関係となることが期待される。すなわち、公共側は従来方式では難しかったヒト・モノ・カネに係わる経営課題を解決し、民間側も国際競争入札参加資格事前審査(PQ)通過のための資格要件や事業運営などの経営上流側のノウハウを獲得するのである。欧州の水メジャーは、自由度の高い契約制度や柔軟な公務員制度などの国内制度を背景に自国の水事業運営から経営基盤を強化してきた。今後、わが国においても、公民連携を軸に国内の水事業を持続可能なものとすると同時に、欧州にはない日本の独自の強みを発揮して水ビジネスにおける国際競争力を強化しなければならない。公民連携企業体「水みらい広島」広島県企業局は、給水収益の減収、老朽化施設の更新費用増大、職員の高齢化など、事業経営の根幹に係わる課題に対して抜本的な対策を検討し、いち早く浄水場の運転管理業務の民間委託などの施策を実施することで事業の効率化を図ってきた。しかしながら、従来型の発注方式により受託者の創意工夫の余地が少なく民間企業のインセンティブが働きにくい側面もあり、それゆえ応札者も減少し競争性が発揮できない課題が生じた。また、外部委託により県職員が現場作業から離れ、技術力の低下も懸念されるようになった。このような課題に対し、広島県企業局は、安心、安全、良質な水を安定供給し続けることを基本理念に「経営基盤の強化」を最優先取り組みとし、「公民共同企業体」を設立する方針を決定した。公民共同企業体の民間側のパートナー事業者は、公Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015027