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Consultant267号

内閣が策定した「日本再興戦略」(2014年改定)においても「インフラシステム輸出戦略」の積極的な実施が掲げられており、国を挙げての取り組みが加速している。水インフラに関しては、経済成長の著しいアジアの諸都市を中心にそのニーズが多様化しており、最適なソリューションの提供には、本市がもつ事業運営のノウハウに加え、民間企業の技術力が不可欠である。このようなことから、本市では全国に先駆け、官民連携組織「北九州市海外水ビジネス推進協議会」を2010年8月に設立した。設立当初57社であった会員企業数は、現在129社(2015年2月末)まで拡大している。その業種も、建設コンサルタント、土木建設、プラント設備、機器・設備メーカー、水処理、汚泥処理、情報処理、維持管理運営、金融、シンクタンクなど多岐にわたっており、上下水道に関する幅広いニーズに対応できる陣容となっている。この協議会では、技術協力で太いパイプを持つカンボジア、ベトナム・ハイフォン市、インドネシア、中国・大連市を対象に、ニーズ調査、セミナーや展示商談会などの活動を積極的に行ってきた。こうした活動の結果、カンボジアでは2011年3月に、会員企業と共同で「シェムリアップ市浄水場建設基本設計補完業務」をJICAから受注した。これは、日本の水道事業体が受注した水ビジネスの第1号案件であり、これを皮切りに、現在19件の案件を受注している。また、北九州市の地場企業が機器を納入するなどの実績も生まれてきている。カンボジア、ベトナムでの水ビジネスカンボジアでは長年にわたる国際技術協力での実績が評価され、2011年、鉱工業エネルギー省(当時)より要請を受け、カンボジア主要9都市の水道基本計画策定に、本市が技術的なコンサルティングを行う旨の協定を締結した。現在、北九州市海外水ビジネス推進協議会会員企業と連携し、基本計画や詳細設計などのコンサルタント業務を中心に請け負っている。既に4都市で計画策定を終え、現在3都市で計画を策定中である。今後、残る2つの都市についても、計画策定を行うこととしている。写真2カンボジア鉱工業エネルギー省(当時)と主要9都市の水道整備基本計画策定に関する覚書締結一つの地方自治体が、一国の水道整備事業にこれほど深く関与することは世界的にも例がなく、本市としては、引き続きカンボジアの水道を支援していきたいと考えている。また、ベトナム・ハイフォン市では、本市上下水道局が約11年間研究を重ねて開発した技術である高度浄水処理である上向流式生物接触ろ過設備(U-BCF)の導入に結びつけた。ハイフォン市では、近年の急速な都市化と工業化により、水道原水である河川の汚染が深刻化しており、その対策が喫緊の課題となっていた。2009年4月、本市とハイフォン市が友好・協力協定を締結した際に、ハイフォン市水道公社から本市上下水道局に問題解決に向けての技術協力の要請があった。これに基づき技術協力を開始した。2010~2012年の3年間、JICA草の根技術協力事業を活用し、ハイフォン市水道公社の幹部職員に向け、U-BCFやその他の日本の高度処理技術の研修を実施するとともに、U-BCFの実証実験を1年間行った。その結果、U-BCFの有効性と安価な処理方法であることがハイフォン市水道公社に認められた。これにより、ハイフォン市水道公社は独自資金により、ビンバオ浄水場にU-BCFを整備することを決めた。本整備事業は、北九州市海外水ビジネス推進協議会会員企業の現地法人が受注し、2013年5月に着工、同年12月に竣工した。このU-BCFは現在順調に稼動しており、ビンバオ地区2万3千人の市民に、安全な水道水が届けられている。032Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015