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Consultant267号

論説・提言第2回このコーナーでは「日本が目指すべき姿と社会のあり方、そこで必要とされるインフラと実現に向けた方策。そしてその際に果たすべき建設コンサルタントの役割とは」をテーマに、各専門分野の視点からの提言を掲載しています。地球温暖化が水循環へ与える影響と求められる対策語り手聞き手公益財団法人河川財団研究フェロー池淵周一(IKEBUCHI Shuichi)一般社団法人建設コンサルタンツ協会理事一般社団法人建設コンサルタンツ協会常任委員会委員長村田和夫(MURATA Kazuo)1943年兵庫県生まれ。京都大学工学部土木工学科、大学院工学研究科修士課程、博士課程を修了。京都大学工学部講師、助教授を経て、1 9 7 9年2月より京都大学防災研究所教授、研究所長(2年間)を歴任。2 0 0 7年3月定年退職、名誉教授となる。現在は(公財)河川財団研究フェロー。土木学会理事・関西支部長、水文・水資源学会会長、国土交通省国土審議会、社会資本整備審議会、林野庁林政審議会委員、淀川・紀ノ川・九頭竜川流域委員会委員などを歴任。著書に『水資源工学』(森北出版)、『エース水文学』(共著、朝倉出版)、『ダムと環境の科学I;ダム下流生態系』(編著、京大出版)等。1951年青森県弘前市出身。東京工業大学工学部土木工学科卒、同大学大学院修士課程修了。(株)建設技術研究所東京支社河川本部長、管理本部長、九州支社長、東京本社長を経て、2013年3月より代表取締役社長。(一社)建設コンサルタンツ協会河川計画専門委員長、企画委員会委員長、九州支部副支部長、常任委員長、関東支部副支部長を歴任。土木学会企画委員会委員、技術推進機構継続教育実施委員会幹事長、教育・企画委員会委員、論説委員会委員、理事を歴任。技術士(建設部門、総合監理部門)、A P E C E n g i n e e r(Civil)、土木学会特別上級土木技術者(流域・都市)。地球温暖化と将来予測村田:2014年7月に『水循環基本法』が施行されました。この法律では水循環を「水が蒸発、降下、流下又は浸透により、海域等に至る過程で、地表水または地下水として河川の流域を中心に循環することをいう」と定義しています。また「健全な水循環」についても、「人の活動及び環境保全に水の機能が適切に保たれた状態での水循環」と述べています。一方では、人の活動によって温暖化が進み、従来の水循環に変化が生じています。その影響を解決するための緩和策・適応策などについてお話をお伺いしたいと思います。まずは現状を正しく認識するために、地球温暖化によってどのような状態が発生しているのか説明をお願いいたします。池淵:1900年以降の観測データからは気温が年々上昇し、地球温暖化がある程度具現化しています。地球を覆う大気の層では、温室効果で温められると大気の温度差のバランスが変わり、風の流れが変化するとともに、温度が高くなると蒸発する水分が多くなり、その水分供給が凝結して雲となり、その際、発生する熱により大気の循環がさらに乱れ、対流活動も活発化します。その結果、雨が強くなったり、旱ばつといった極端現象が増えるのです。村田:大気中への二酸化炭素(CO2)の排出が地球温暖化に与える影響、人為的な影響の程度はどのように説明されているのですか。数値モデルによる検証や予測も行われていますが、モデルの構成や課題、モデルによって理解できた現象などについて解説して下さい。池淵:地球温暖化がもたらす気温とか降水量の変化は、世界的にモデルの精緻化が進み、大気、海洋や陸域を結合した気候システムモデルで、全球を20kmグリッドで計算できるようになって来ています。この気候モデルで19世紀後半から20世紀後半までの気候変動の再現実験もされ、モデルの信頼性はかなり高まって来ています。将来予測は、このモデルに外力としていくつかのCO2排出シナリオを与えて推計しています。村田:最新モデルでは、日本や世界において、どのような影響を受けることが予測されているのですか。池淵:東京大学気候システム研究センターの木本昌秀教授の研究では、1900~2100年までの雨を出力していますが、再現はもとより将来にあっても無降水日の増加、少雨日の減少、多雨日の増加が予測されています(図1)。海面水温の上昇とともに台風の数は減りますが、一個あたりの降水量は増加すること、また梅雨の期間は西南日本であれば、7月上旬とか8月上旬に雨量が大きくなること、降雪量の減と融雪の早期化が進むことな002Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015