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てはめるのか、逆に、そこから離れた地域では、これまでと異なる守り方を考えていくことが必要なのかもしれません。池淵:なかなか踏み込めないのは、シナリオの選択やその信憑性や確信度をどう見たらいいのかも関係していますね。科学的根拠が地球温暖化の政策決定者を動かす大きな道具になって来たことは、世界的にも認められる傾向にあります。従って、説明力、理屈、仕組み等が、納得いく方法で取り込まれているか、将来の計算値の信憑性はどのくらいかを理解することが必要です。もちろん、予測はシナリオベースですから、その値が連綿と続くのか弾力的に見守らざるを得ませんが。村田:いずれにしても、予測モデルや被害シナリオをきちんと構築し、確実に予測されることの対策はしっかりやる必要があるということですね。池淵:すると今度は、その優先順位をどう付けるかが問題になります。先にも述べましたが、リスクがどこに存在しているのか、どういう災害に対して存在しているのか、そういうリスクの評価技術が必要です。この頃は、あらゆる災害の規模が大きくなり、複合災害化の側面もあります。各地域の災害のポテンシャルを見ると同時に、それに対してどこにリスクがあるのか、何をもって評価するかが課題のようです。現在の日本では、被害で評価しています。被害を軽減できる効果といった観点で適応策を取って来ました。どういうリスク軽減に結び付けるか、適応策をどう描くか、優先順位をどうするかが、まだ設定しきれていないのです。だから今、焦点の当て方はリスク評価とその技術の高度化に向かっている傾向にあります。リスクコミュニケーションと今後の方向性村田:我々建設コンサルタントは、今まで、ある一定の予条件の下で検討することが中心で、今お話しのようなことは実施して来なかったように思います。その場合、地域や国民が期待するニーズに応えるためには合意形成、リスクコミュニケーションが重要だと思います。この時に留意すべき点はどのようにお考えですか。池淵:今まではデータ至上主義でした。これからの将来の推定値は、不確実さが内在された中で、どういう値を持ち込めるのかといった新しい思考で対応しない限りは難しいでしょうね。ただ難しさありますが、地球温暖化の影響とそれへの対応策を認識するためにもシナリオ型とは言え、その出力の傾向やリスクの存在、リスク軽減策を見える形で表現することが必要です。村田:今、東日本大震災の被災地で行っている様に、災害から逃れられる場所に生活空間を造るなど、本質的に危険性を無くすことも方法の一つです。しかし、なかなかそこには到達できませんので、段階を踏みながら、私たちが住み続ける国土をどういうシナリオで造っていくのかを、土木技術者として考えていくことが必要ですね。池淵:今までの国土経営では、どんな地域にも公平に公共サービスを提供してきましたが、今後はインフラ整備にあっても各種リスクの存在とその軽減効果を踏まえ、選択と集中が必要ですね。人が減る中で、そこに人がいなければ災害にはならないとの観点から移転も含めて、どこまで整備するか考えなければなりません。適応策の中に含まれるインフラの維持管理の技術開発やリスクの評価技術もあるでしょう。健全な水循環の目標を施策に移すためには、評価や効果の検討が必要です。健全性の指標とは何か、制約条件もある中で、関係機関や関係者、あるいは住民を含めて、健全な水循環の目標をどう立て、目標に向かって進める施策をどのような形で表現し、その効果をどのような指標で示せるか、それとともにリスクコミュニケーション技術を高めることが求められます。選択と集中の施策展開を参加型で協議して合意形成を図る時代ですから、なおさらです。村田:『水循環基本法』が示している「健全な」の中には、環境も安全も含まれています。行政も学識者も我々も含めて、これから一緒に考えていかないといけません。池淵:そこに建設コンサルタントの大きな役割がある。国民のニーズを把握して、内容によってはテーマの設定、埋め込み、提案をもっとしてほしい。そのことが協会、ひいては業務に携わる人材の高揚感に結びつくからです。<図・写真提供>図2 水災害分野における地球温暖化に伴う気候変化への適応策のあり方について(答申)池淵氏・村田氏顔写真、写真1初芝成應写真1対談風景(2015.1.27建設技術研究所に於いて)Civil Engineering Consultant VOL.267 April 2015005