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くなる訳です。これが、渋滞の発生と速度変化の後方への伝播メカニズムです(図3)。写真2トンネルのようにいきなり暗いところに入ると目が慣れるのに時間が必要(暗順応)りアクセルを弛めてしまう人もいる訳です。さらに、目の生理として、明るいところから暗い所に入ると、周囲の暗さに慣れるまで短い時間が必要になります。これを「暗順応」と呼んでいます。このような運転者の心理と生理によって、どうしても閉塞空間に入ると速度低下を起こす運転者が出てきます。加えて、人間には行動を起こす時に「反応時間遅れ」が生じます。これは、物を見て、脳で判断し、行動を起こすまでにかかる時間のことで、1~2秒です。運転免許更新時などに、ライトの点灯を見てからレバーを操作する類のテストを受けたと思いますが、あれはその人の反応時間を測っている訳です。この反応時間遅れが原因になって、後続運転者は多くの場合、前車の速度変化よりも過剰な反応をします。前車が減速した時にはより大きな減速をし、逆に、前車が加速した時にはそれよりも大きな加速をします。そうしてこの過剰反応が後続の車に伝播していくと、交通流の中で速度変化の増幅現象が引き起こされます。サグ区間やトンネルに入った直後の区間で速度低下とそれに伴う増幅現象が起こっているのを知らずに、上流からはどんどん車が来る訳です。交通量が飽和(交通容量)状態かそれに近い状態の下で、サグ区間やトンネルに差し掛かった先頭車が起こした些細な速度変化が後続する車によって増幅され、後方に伝播していき、先頭車から何十台も後ろを走る車は、結局速度ゼロになるまで減速せざるを得な図3サグ部における渋滞の伝播例渋滞と超過交通需要交通渋滞に巻き込まれた経験のある運転者の多くは、その時の渋滞がとんでもなく大量の交通需要によって引き起こされていると感じるようです。確かに、盆・暮や長期の連休に高速道路上で発生する渋滞は、間違いなく大きな交通需要によって引き起こされます。しかし、平日の都市内街路や高速道路で発生する交通渋滞については、比較的少ない需要の超過によって発生していることが知られています。例えば、首都高速道路の平日朝の通勤時に発生する渋滞を考えてみましょう。都心環状線に接続する放射線の上りで、朝の7~9時の2時間に最長7kmの交通集中による渋滞が発生したと想定し、以下の交通条件下で超過需要を推定してみます。まず、ボトルネックの交通容量を2,700台/時・2車線(1,350台/時・車線)とします。ボトルネックより上流側の渋滞流の密度を70台/km・車線、上流からの自由流領域の密度を20台/km・車線とすると、渋滞流と自由流との密度差は50台/km・車線となります。結局、最長7kmの渋滞区間の中に滞留している車両の数(超過需要)は、2車線合計で以下ということになります。D ? ( 70 ? 20)?7?2 ? 700台/ 2車線一方で、この路線のボトルネックの交通容量は2時間010Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015