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特集5サグ渋滞を知る部に潜む目の錯覚と『渋滞』友枝明保TOMOEDA Akiyasu武蔵野大学/工学部数理工学科JST CREST/准教授サグによる渋滞は、上り坂で速度が低下し、その影響が後続車へ伝播することで引き起こされる。これには「錯覚」が関係している。なぜ人は錯覚するのだろうか。人の心理を考慮して渋滞軽減に取り組んでいる事例も紹介する。渋滞はなぜ起こるか?NEXCO東日本の2013年度の統計1)によると、高速道路で発生する渋滞の約3/4は、交通集中によるものである。その発生場所を見ると、その半分以上が上り坂およびサグ部と呼ばれるところで発生している。サグ部とは、英語のsag(たわみ、落ち込み)という言葉通り、たわんでいるような道路構造、つまり、下り坂から上り坂へと変化するような凹型の構造を持つ場所を指している。このサグ部で生じている渋滞のメカニズムは、数理科学の立場では、「車両密度が高くなると、自由流が不安定化し、安定な渋滞流へと遷移する」と解釈できる。各車両の振る舞いを記述する数理モデル解析から得られる渋滞形成のメカニズムの共通した解釈は、スムーズな流れであっても、車両密度が高くなる(車間距離が短くなる)と、ある車のちょっとした速度低下がきっかけとなり、その速度低下の影響が後方に増幅伝播してしまった結果として、渋滞が発生してしまう、ということである。すなわち渋滞の種は、ある車のちょっとした速度低下であり、そのきっかけを作っているのが、サグ部の上り坂というわけである。サグ部に潜む目の錯覚サグ部では、上り坂へと傾斜が変化するが、ドライバーはなぜ加速して適切な速度を保つことができないのであろうか。ここでは、その一つの理由として、サグ部の道路構造に潜む目の錯覚によって、ドライバーが上り坂であることを正しく認識できていない可能性について紹介したい。図1の二つの画像をご覧いただきたい。これは香川県にある屋島ドライブウェイで撮影した写真画像である。(a)(b)図1縦断勾配錯視の例:香川県にある屋島ドライブウェイ(協力:屋島ドライブウェイ株式会社)024Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015