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図6エスコートライト。壁面の緑のライトが進行方向に流れる(提供:首都高速道路株式会社)させる」ことである。二つ目は、道路の形に反するだましのテクニックを使うわけではなく、例えば下り坂の場合、同じ速度で走行しても時間軸で「加速度を徐々に強めに知覚させるOptical Flow(視覚的リズム/ペース)」を形成させることで、「速度を知覚させる」ことを実現しているデザインである。このODSは、ドットパターンが意味を持たないニュートラルなデザインであるため、道路面にだまし絵を描くイメージハンプのように、時間が経つと慣れてきて効果が落ちるといったことはなく、効果が持続するといわれている6)。・エスコートライト図6に示すエスコートライトも首都高速道路3号渋谷線下りの池尻付近で施工されている。この付近では約3%の上り勾配があり、無意識の速度低下が生じている。そのため、エスコートライトを壁面に設置し、60km/h程度で進行方向に順次点灯することにより、無意識の速度低下を防ぐというものである7)。エスコートライトの設置により、渋滞損失時間が減少するとともに、所要時間が平均3分短縮したという報告がある8)。道路環境に潜む錯覚現象本稿では、縦断勾配錯視と呼ばれるサグ部で観察される目の錯覚現象が、渋滞のきっかけを作っている可能性について、屋島ドライブウェイの例とともに解説した。さらに、側壁パターンが縦断勾配錯視に影響する一つの要因であることから、錯視を軽減し道路傾斜を正しく示す方法について提案するとともに、実際の速度低下対策として導入されている事例について紹介した。様々な対策が施されているが、縦断勾配錯視については、異なる傾斜の道路が複数連なっている場合に生じるため、建設時になるべくこのような道路構造を避けて設計することが重要である。最後に、交通渋滞とは外れるが、目の錯覚が引き起こす交通事故の可能性についても触れたい。図1(b)に示すように、下り坂が上り坂に見えてしまう場合、それは速度低下ではなく、速度超過につながる目の錯覚と言える。前述したとおり、目の錯覚は、理性で答えがわかっていても同様の錯覚現象が再び生じる、という特徴を持つ。そのため、ドライバーの見落としや、速度超過が原因で事故が多発している地点では、道路環境が作り出す目の錯覚がドライバーの判断を誤らせている可能性もある。本稿を通じて、道路環境に潜んでいる錯覚現象を体験していただくことで、交通渋滞や交通事故が少しでも軽減されれば幸いである。*1オプティカルドット:登録第4956228号株式会社ステュディオハンデザイン、首都高速道路株式会社の共同特許。シークエンスデザイン:登録第5281648号株式会社ステュディオハンデザインの登録商標。<参考文献>1)NEXCO東日本、道路管理運営事業ホームページhttp://www.e-nexco.co.jp/activity/safety/detail_07.html2)「計算と社会」岩波講座計算科学6、岩波書店、20123)「錯視完全図解―脳はなぜだまされるのか?(Newton別冊)」、ニュートンプレス、20074)P. Bressan、L. Garlaschelli and M. Barracano、Psychological Science、441-449、20035)「坂道の傾斜知覚の研究」對梨成一著風間書房、20136)韓亜由美、玉木真、小野晋太郎、佐々木正人、須田義大、池内克史、東京大学生産技術研究所、生産研究、64巻2号、p.297、20127)首都高速道路株式会社(平成27年2月12日)http://www.shutoko.co.jp/company/press/h26/data/02/12_escortlight/8)首都高速道路株式会社(平成27年3月5日)http://www.shutoko.co.jp/updates/h26/data/03/05_escortlight/Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015027