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特集6都渋滞を知る市交通計画の視点からの交通渋滞対策小早川悟KOBAYAKAWA Satoru日本大学理工学部交通システム工学科/教授これからの渋滞対策は様々な量や地点で発生する交通需要を如何に面的・時間的な空間で捉え、効率よく分散させ目的地まで到達させるかが求められている。これらの施策は車・自転車・歩行者も交えて総合的に考えていく必要がある。都市交通計画の視点そもそも渋滞は、交通容量を超えて多くの交通需要が集中するために発生する現象である。同じような道路であっても、縦断勾配(登り坂)やトンネルといった車両の速度が低下する要因があると交通容量が低下し渋滞が発生する。また、交差点部や高速道路の分合流部などでは1つの空間を複数の方向から侵入してくる車両が共有して利用することとなるため、どうしても交通容量が低下し渋滞発生個所となる可能性が高い。このような問題に対して、これまでの対策は容量を増やすような道路整備を行っていくことで対応してきた。首都高速道路は交通容量が低下する交差点を立体的に分離し、それを繋げるといった思想で建設されたとも聞く。また、郊外の高速道路でも車線数を増やしたり、バイバス道路を整備したりして交通容量の増加策を実施してきた。しかし、交通需要の増大に対して、その量を予測して必要な施設量を無制限に供給することは、有限な都市空間においては難しく、財政問題や環境問題が深刻化していくなかで、今後もこのような道路整備が続けられていくことは考え難い。また、渋滞が発生している地点の対策だけでは問題解決が困難であったり、他の場所で新たな渋滞が発生したりする可能性があり、1地点のみでの渋滞対策には限界がある。そこで、既存の道路ストックや交通インフラを最大限に活用し、交通需要をコントロールするという考え方が必要となった。わが国では1980年代頃から交通需要マネジメント施策が広まり始め、その後、コミュニケーションにより交通行動の変容を促す「モビリティマネジメント」という考え方が浸透してきている。これらの考え方は、交通流の問題として渋滞問題を捉えるのではなく都市交通計画という視点に立って考えられている。そこで本稿では、都市交通計画の基本的な考え方であるトリップという概念に立ち返って交通渋滞について述べてみたい。トリップに働きかける渋滞対策トリップとは、「ある交通目的の下に出発地から到着地まで移動する事象」もしくはその事象を計測する「単位」として利用される。トリップには必ず、出発地、到着地、交通目的、交通手段があるが、出発点、到着点をトリップエンドと呼び、1つのトリップには必ず2つのトリップエンドが存在する。1)交通渋滞対策をトリップに働きかけることに視点をおいて分類すると、1トリップ数の低減化、2トリップ長の縮減化、3トリップの平準化の3つに分けて考えることができる。1トリップ数の低減化は、発生・集中源の調整を行うことで、自動車交通のみならずトリップ全体の数を減らそうとするものである。例えば、通勤日を調整することで1週間のうち会社に通勤する日数を減らそうとする対策や、ICT技術を活用し通信手段によって移動の代替を行う対策などが挙げられる。インターネットを介して遠隔地と行う会議などは移動を通信手段で代替している好例である。この場合は、交通渋滞対策として特に意識をしていなくても、渋滞緩和に寄与している可能性があるばかりか、移動の時間や費用といったコストの削減や移動のエネルギーを節約することもできる。しかし、すでに発生(出発)しているトリップに関して028Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015