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写真2シンガポールで電子混雑課金制度(E R P)が導入された中心市街地の道路性も否定できない。そのため、このような施策を推進するためには、どのようなシステムを構築すれば利用者にとってその不便さを解消することができるかが重要な課題になる。トリップエンドのコントロールと都市交通計画交通需要の発生集中コントロールは、地理的条件、気象条件、都市形態、社会基盤整備の進度に加えて、商習慣、生活習慣などによって影響を受ける。交通需要のコントロールは、これまでの制約のないモビリティ(交通行動)に何らかの制約を加えるわけであるから、その制約条件と目的によって、その協力度あるいは遵守度は大きく左右される。そのため、さまざまな都市の特徴を把握したうえで、交通渋滞を考えていかなければならないが、都市交通計画の視点で渋滞問題を考える際には、交通モード毎のトリップエンドのコントロールが重要である。つまり乗り換えを楽にするということである。通常、トリップとは前述したとおり「ある交通目的の下に出発地から到着地まで移動する事象」で、そのトリップは複数の交通機関を利用して移動している場合が多い。パーソントリップ調査等では、代表交通機関を挙げて分析を行うことが多いが、交通需要をコントロールする際には、自動車から徒歩、自動車から電車、自転車から電車、自転車から徒歩、といったような各交通モードの結節点での取り組みが非常に重要になってくる。つまり、トリップを各交通モードで分割し、そのつなぎ目である交通モード毎のトリップエンドに焦点をあてて対策を行っていくことで、交通需要のコントロールを意識した都市交通計画からの渋滞対策ができるといえる。特に、自動車利用の誘導という視点から最も重要となってくるのが、自動車のトリップエンドをいかにコントロールすることができるか、ということにある。そのためには現在の駐車問題とわが国の駐車政策をもう一度見直す必要がある。都心部においては、時間貸しの駐車スペースが絶対的に不足しているといわれ、駐車場整備地区を指定したり、大規模小売店舗立地法や附置義務駐車条例などにより駐車場整備を進めてきたが、現実には時間貸し駐車場には空き駐車スペースが存在し始めている。これまでは路上にあふれた違法駐車車両を路外に移動させるために路外駐車場の整備が求められてきたが、都心部にいたずらに乗用車の駐車場整備台数を増やしていくことは、自動車の交通需要を顕在化させることにもつながりかねない。都心部に流入してくる自動車をいかに外周部で受け止めて、広域的な都市や地域のトータルでみた時の駐車場整備のあり方が求められている。一方で、貨物車用や自動二輪車用の駐車スペースは未だ整備が不十分であるといわざるを得ない。そのため、路上には荷さばきのための貨物車が駐車し交通流を阻害しているという現状もある。つまり、どのような車をどのような所で受け止め、その後の人や物の移動をいかにスムーズに誘導することができるかということを考えなければならない。総合交通戦略の取り組み国土交通省2)では、地方自治体において総合交通戦略を策定することを勧めている。総合交通戦略の特徴として、1将来都市像を実現するためにまちづくりの視点から交通や土地利用等の施策をパッケージ化、2関係者間の連携と役割分担による推進体制(協議会方式)、3実施プログラムによる着実な推進、4 PDCAサイクルによる持続的な施策展開、の4つのポイントを挙げている。特に、これまでの都市交通政策やまちづくりの施策の多くは単発的な取り組みとして実施されてきたことを反省し、将来の都市像を実現するために「施策をパッケージ化」することで、まちのあるべき姿をめざしていることが大きな特徴となっている。つまり、これからの交通渋滞対策は、自動車交通が自動車だけで完結するのではなく、徒歩や自転車といったパーソナルなモビリティや公共交通システムのようなマス・トランジット(大量輸送機関)も含めて、都市としてどのような交通システムを構築していくのか、といった総合的な交通戦略が必要である。交通渋滞対策というと、交通流の分析に視点をおいた道路交通対策に関心が行きがちであるが、どのような都市を構築していくかといったような都市の将来像を考え、都市交通計画という広い視点で捉えた総合的030Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015