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Project 2 briefプロジェクト紹介ブラジルにおける生態系ネットワークの取り組み? J I CAジャラポン地域生態系コリドープロジェクト?浅野剛史ASANO Koji日本工営株式会社コンサルタント海外事業本部環境事業部/環境技術部課長■はじめに1980年代に北米で生まれた「生物多様性」というコンセプトは、今日の自然保護に大きな影響を与えている。それ以前の自然保護制度は、専用の土地に囲い込み、その中で動植物を保護する「保護区」が中心であったが、それでは生物多様性を守ることは困難であり、保護区を中心として農地や市街地等も含めた広域での取り組みが必要であるとの認識が形成されて来た。日本で「生態系ネットワーク」と呼ばれる施策は、保全すべき生態系を物理的・機能的につなぎ、動植物やその生息域の孤立を防ぐことを目的としている。その形成にあたっては、核となる保護区(コア)及び、保護区への外部からの影響を軽減するための緩衝帯(バッファー)、更にこれらをつなげる生態学的な回廊(コリドー)を適切に配置することが必要である。生態系ネットワークは広域を対象とした生態系保全の活動であり、多くの国が試行錯誤を重ねている。本稿では、ブラジルにおいて当社が実施を支援した「生態系コリドー」導入の取り組みを紹介する。■ブラジル中西部に広がる■セラード生態系セラードとは、草原や熱帯林等の多様な生態系がモザイク状に分布する熱帯サバンナ地帯であり、ブラジル国土の約21%を占める主要なバイオーム(生態系群)である。セラードは地球上最も豊かな生物多表1プロジェクトのコンポーネントと活動の要約コンポーネント1.連邦・州レベルの関係機関を連携させる組織横断的な枠組の構築【主な活動】(1)複数の関係機関が連携の根拠となる協力協定の締結、更に調整会議の設置(2)2つの機関が特定の業務で連携するための技術協力協定の締結(3)保護区周辺の利害関係者による保護区審議会の設立コンポーネント2.連邦・州レベルの関係機関による「生態系コリドー導入戦略」の策定【主な活動】(1)関係機関が共有出来るGISデータベースの構築(2)関係機関が共有出来る政策(ビジョン、課題、戦略、目的、方法等)の策定(3)関係機関のコミットメントを確保した活動計画の作成(4)関係機関が共有して利用する運営ガイドラインの作成コンポーネント3.保護区周辺の自治体の自然環境保全のための法制度と仕組の構築【主な活動】(1)自治体レベルの環境基本法の策定、更に自治体環境審議会の設立(2)自治体レベルの環境基本計画の策定、更にパイロット活動の実施(3)自治体レベルの環境保全活動への州補助金制度の活用(4)自治体立自然保護区の設立のための法整備と設立様性を有する熱帯サバンナと言われ、ユネスコの世界自然遺産並びに生物多様性ホットスポットに指定されている。しかしセラードでは、1980年代に始まった大規模な農業開発等により、自然植生の少なくとも約48%が農地や牧草地等へ転換された。その消失スピードは年間約6,500km 2 1)、1分間に換算すると東京ドーム約1個分に相当する。■セラード生態系の最後の楽園・■ジャラポン地域リモートセンシングによる解析では、残存するセラードの貴重な自然植生は、その北部地域に集中している。州で言えばトカンチンス州、マラニョン州、ピアウイ州、バイア州にあたり、特にこの4州の接する一帯はもっとも原生植生が残された地帯として知られる。ここが本プロジェクトの対象である「ジャラポン地域」である。この地域はブラジルの主要な3つのバイオーム(アマゾン、セラード、カアチンガ)の移行地帯に位置し、またサンフランシスコ川、トカンチンス川等のブラジル主要河川の水源地帯でもあるため、極めて保全価値の高い地域である。その一方、近年この地域は「世界最後の農業フロンティア」とも呼ばれ、農業開038Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015