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保全活動の効果を上げるためには、優先地域の選定が必要であった。選定上の最重要課題は、「1いかに生態学的に重要な生息域を特定するか」「2いかに農業開発圧力の高い地域を特定するか」「3いかに既存の法制度活用の範囲内で効率的に保全を進められる地域を特定するか」の3つに絞られた。選定手法を決定するために、多様な関係者への聞き取り等を行った結果、プロジェクトが目指す優先地域に求められる条件を「A生態学的条件」「B社会経済的条件」「C法律的条件」の3つに分類し、各条件で個別解析を行う方法を採用した。各条件と個別の特定方法を図2に整理した。分析はGISを用いた空間解析を活用し、目的や既存情報に応じてクライテリア(基準)とパラメーターを設定した。解析の結果得られた各レイヤーは、最終的に重ね合わせによる比較分析を行い、最優先地域の特定を行った。図2に示した1~7の解析の中で、特に重要であった「1指標種の分布」に用いたプロセスを図3に要約する。この作業の結果、広大なジャラポン地域の中で保全活動を行うべき優先地域と、それらの優先順写真5位が明確になった。この手法は既存情報とGISを用いて低予算・短期で優先地域を特定する技術的提案であり、人口密度が低く比較的自然植生が残されている等の類似条件を持つ他の地域にも適用出来る。そのため、ICMBioは今回の調査を広く広報するとともに、作業内容を技術マニュアルとして公開した。将来、ブラジルの他地域での生態系コリドー導入でも、この技術が有効ステップ1:保全対象種の選定:→脊椎動物門から主要グループを選定(鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類)→IUCN Red Listから重要動物種に関する対象地域での生息情報を分析ステップ2:既存情報から対象地域での生息分布の予測:→15環境条件(標高、気温、降水量等)を用いたSDM(Species Distribution Models)の検討→専門家による生息可能性の検討ステップ3:生息域パターンの判定:→オーバーレイによる生息域パターンの分析と対象種のグルーピング→類似生息域パターンを比較し、代表種(今回は4種)の抽出ステップ4:保全優先地域の選定:→重要な生息域(Critical Habitat)の地理形態学的な特徴の把握と優先地域の特定→視覚的な検討による保全優先地域のエリア・境界の判定連邦政府、トカンチンス州、バイア州のプロジェクト関係者(バイア州、サルバドール市)活用されることを関係者は期待している。■おわりに大きな期待を集めた『生物多様性条約』が発効して既に21年が経過した。2002年の第6回締約国会議で採択された「2010年目標」は、21の個別目標のすべてが最終的に「達成されず」と結論付けられた。2010年の第10回会議で新たに採択された「2020年目標(愛知目標)」についても、2013年の第12回会議では、20ある個別目標のほとんどについて、達成するには施策が十分でないと評価された。日本は条約発効以来最大の拠出国3)であるが、残念ながらこの分野の国際協力で十分なプレゼンスを発揮出来ていない。日本の顔の見える協力を担う開発コンサルタントとして、少しでも世界の生物多様性保全に貢献出来るよう、今後も鋭意取り組んで行きたい。ステップ5:優先地域間での保全の優先順位の設定:→ステップ4で特定された優先地域間の社会経済的条件に関する分析→ステップ4で特定された優先地域間での保全の優先順位の分析各優先地域における保全アクションの検討へ<参考文献>1)ブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA),2011“Monitoramento do Desmatamento nosBiomas Brasileiros por Satelite”より2009-2010の統計2)同じくIBAMA, 2011(2009-2010の統計)3)http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/bio.html図3指標種の分布可能性図の作成と優先地域の特定手順Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015041