ブックタイトルConsultant268号

概要

Consultant268号

OVERSEASMongolia─モンゴル国─海外事情チンギス・ハーン（韃靼）帝国の地菅原春SUGAWARA Shun日本工営株式会社/コンサルタント海外事業本部/ホーチミンMRT開発事務所晴天の霹靂この30年間、常夏東南アジアのプロジェクト経験だけのこの身に、突然、想定外のモンゴル転勤の辞令が下った。この国の知識は、幼少の時は元寇と義経渡海伝説、長じては最近のモンゴル人横綱くらいである。記憶をたどると、確かに12～13世紀のこの国は、地球儀を片手で持ち上げた掌が覆う面積で、今の中国、朝鮮、インド、シベリア、ひいては中央アジアを超え中部ヨーロッパをすべて己の版図に入れた唯一の大帝国であった。今回のプロジェクトは、モンゴル写真1モンゴルの位置図（Googleより加工）鉄道公社の求めに応じ、この国の広大な大地に眠る無尽蔵ともいうべき手つかずの鉱物資源（石炭、ウラン、金、銀、銅、鉄、レアメタル）を、隣国である中国、ロシア、ひいては朝鮮、日本へ輸送するものである。そのルートは中央のゴビ砂漠から東の草原地帯を横断し、方向を変え、北はロシアへ、南は中国へ通じる。我々の業務は、この全長1,600kmに広軌鉄道を敷く基本計画と調達支援で、15カ月の工期である。この鉄道計画は将来、中央のゴビ砂漠から西に隣接ウイグル・カザフスタン方面まで延長される膨大なものである。そんなロマン溢れる国で見聞したことや感じた事を記してみる。モンゴルの概要モンゴル国はユーラシア大陸の中心に位置し、成田から首都ウランバートルまでの直行便で5時間半のフライトである。直行便は週3日あるが、冬期になると便数が減る。国土面積はかつてと比べずいぶん小さくなったとはいえ日本の4倍となる156万km 2で、気温は夏で30℃前後、冬で零下40℃前後、極寒・極乾燥・年較差が大きいという気候特性を持っている。春・夏・秋の季節がそれぞれ2か月位で短く、年の半分が冬である。そのせいか、何千万年もかけてこの地の環境に順応した草木の成長は早く、あっという間に落葉する。人々も、長かった冬の衣装を脱ぎすて、短い夏を惜しむかのように、開放的な服装になる。総人口は290万人で、首都にその45％が集中し、朝夕には交通混雑を引き起こしており、その緩和策として道路計画や地下鉄計画が進められている。しかし、国土の大半では、046Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015