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Q3.そのような課題に対して、どのような提案をされたのですか。A3.まず、各州間のコンフリクト(対立)の背景を把握し、水ユーザーや水管理機関といったステークホルダーの参加のもとにワークショップを各州で開催し、対立点の整理と対処方法の合意プロセスを提案しました。並行して、州相互の計画調整に合理的判断を与えるため、現在および将来の水需要と長期間の水文資料に基づく流域モデルを構築し、将来必要な水資源開発のための施設計画とモニタリング計画を併せて提案しました。実際の計画調整と合意形成の場として、河川流域協議会(RBO)の設立とコンフリクト調整メカニズムを提案しました。各州間のコンフリクトを調整していく協議プロセスは、長い年月を経て解消に向かうものです。本プロジェクトは、その端緒を示したものといえ、一昨年RBOが結成されたと聞いています。Q4.プロジェクトを運営する上で、通常どのような点に留意されていますか。A4.本プロジェクトは、建設技研インターナショナル単独で受注・実施したものです。通常は数社で共同企業体を結成し、お互いの専門分野の長所を持ち寄って実施します。こうした場合、幹事会社の団長や副団長は、プロジェクトの明確な工程管理のもと、他社の技術者と十分な意思疎通を図りながらプロジェクトを進めていく必要があります。まずは団内の意思統一が重要です。さらに、プロジェクトを進めていくに当たって、一番の難関は相手国政府のカウンターパート機関との合意形成とプロジェクトに対して彼らの協力・支援を受けることです。風土・宗教の異なる相手側との技術協議を根気強く行うことにより、当初は日本の技術をあまり重要視していなかった彼らの認識を日本の技術者集団への高い信頼へと改めることができました。Q5.今後海外業務に取り組もうとする後進へのアドバイスを、お願いします。A5.私はちょうど2000年頃から、さまざまなプロジェクトのマネージャーを引き受けてきました。これまでの経験から強く感じることは、相手国政府機関の人たちとの相互理解、共通認識に基づいた調査計画作業、互いの合意のもとでの基本計画の立案といったプロセスを経ることで、風土と宗教の違いを超えて、実り豊かな成果に結び付くということです。皆さんも、物怖じせず相手国政府機関の人たちの生活習慣なども含めて何でも見てやろうという大いなる好奇心を持つことが大事です。また、イランの技術レベルはかなり高く、彼らとの技術的な議論は非常に楽しいものでした。そのような議論や現地調査での協働を通して、互いにプロジェクトの成果を築き上げていくということを心掛けることをアドバイスします。一先輩として、実り豊かな海外業務にチャレンジしてもらえればと思います。?まとめ写真1イランの地方都市アルデビルでの会議(立って説明しているのが森下氏)経験に裏打ちされたベテラン技術者の言葉には、これから海外業務に取り組もうとしている企業あるいは若手技術者にとって非常に示唆に富んだものがあります。建設コンサルタントとして、高い技術サービスを提供すること、またそれにも増して関係者と良好な関係を構築するために、コミュニケーション能力を鍛えることが重要であると言えます。また、このようなベテラン技術者の実経験に基づくプロジェクトリーダーとしてのノウハウを後進にどのように引き継いでいくかは、既に海外に展開している企業にとっても重要な課題だろうと思います。写真2カスピ海沿岸の観光地マスレ(左から二人目が森下氏)Civil Engineering Consultant VOL.268 July 2015059