ブックタイトルConsultant270

ページ
12/72

このページは Consultant270 の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant270

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant270

特集土木遺産XIII ?ラテンアメリカ古代文明から現代文明への転換を支えた土木技術?1ラテンアメリカ土木の歴史と発展高橋均TAKAHASHI Hitoshi東京大学大学院/総合文化研究科/教授「土木途上地域」ラテンアメリカ「土木遺産」と聞いて、最近出張先で体験した一事件が思い浮かんだ。場所はメキシコ太平洋岸沿いにあるシナロア州マサトランである。長大なビーチに沿って円弧を描く海岸通り「マレコン」が印象的なリゾート都市だ。明日は、西シエラマドレ山脈を越えて高原の町ドゥランゴへ移動したい。マレコンを往復する路線バスを降り、少し内陸へ入るとバスターミナルがあった。施工年代は1960年前後、円形プランの、かなり作家性の感じられる現代建築だ。入口を入るとすぐ、円形の外周部分にバス会社の切符売り場が並んでいる。一社を選んで午前11時の便の切符を買った。去りぎわ、念のために質した。「7時間かかるんですよ写真1メキシコ、マサトラン市のバスターミナルね」。窓口のお姉さんは答えた。「いいえ、3時間半で着きます」。コンコースを下見するついでに、ベンチに座りガイドブックを広げた。ロンリープラネット社の1,056ページの大冊だ。付箋の箇所を見ると確かに7時間かかるとある。ページを飜して刊記を見た。2008年。今は2014年の8月。もしかして、あのパターンか。そのパターンだった。翌日、12時17分に発車した11時のバスは(このくらいの遅延はメキシコでは普通)、マサトランから海岸沿いに少し南下したところで東に向きをかえた。標識があり、新道と旧道の分岐点だという。バスは新道に入った。山また山の斜面を九十九折りで上ったり下ったりしていく道路を思い描いていた私は予想を裏切られた。道路は山の高いところをまっしぐらにつきぬけて、まったく谷へは降りないのである。そのかわりトンネルばかりだ。短いトンネルは200箇所くらいあったと思う。長さ1~2kmのトンネルも随所にあり、天空に架かるような斜張橋も2箇所くらいあった。結果的にバスはほんとうに15時52分にドゥランゴのバスターミナルにすべりこんだのである。正直、新道のトンネルずくめは迷惑だった。車窓観察が思うにまかせない。しかし旧道を行けばローカル便を乗り継ぐことになる。当然7時間では着かず、たぶん2日がかりになる。ドゥランゴは海抜1,880m。ハリウッド西部劇映画の往年のロケ地として知られた砂漠の中の街である。「マサトランから来たんだが、新しいハイ010Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016