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写真2ペルー、クスコの町並み。インカ帝国の首都の街割りを保存している写真3ペルー、クスコ市。街角にインカの石組みが残る。鉄の道具なしでこの精度ウェイ、すごいですね」と声をかけると、70歳前後とおぼしきタクシーの運転手さんは嬉しそうに答えた。「開通したばかりだ。工事が始まってから12年もかかったよ」。この話から始めた意図はこうである。たしかにラテンアメリカには数々の顕彰すべき土木記念物がある。しかしおそらくそれをずっと上まわる数の「土木課題」が手つかずで残されている。ラテンアメリカはたとえば日本などとは異なり、今日なお「土木途上地域」なのだということを、最初に強調したかったのである。コロンブス来航以前の時代ラテンアメリカ史は大きく3つに時代区分するのがふつうである。「コロンブス来航以前の時代」「植民地時代」「独立後の時代」である。「コロンブス来航以前の時代」に「遺産」と呼ぶに足る土木事業をおこしたのは、ご存じアステカ帝国、インカ帝国をはじめとする、アメリカ先住民が作った諸国家であった。アメリカ先住民の祖先は、現在から1万数千年前、最後の氷河時代の終わりぎわにアラスカを住処にしていたホモ・サピエンスたちである。シベリアでマンモス狩りをしていた集団の一部が陸続きのベーリング海峡を越えてきたのである。温暖化が進むと陸化していた海峡が海面下に沈んでシベリアへは帰れなくなり、逆にカナダ全域を覆っていてかれらの前途を阻んでいた氷床(厚さ2,000mの万年雪の塊)が融け始めた。当時の世界人口は数百万。アラスカにいた個体数はおそらくほんの数千だった。ところが氷床の南にはおびただしい数の大型四足獣が棲息し、マンモス狩りの技術で容易に獲物にできた。人口は天井知らずに増加し、たちまち中米地峡部を越えて南米大陸にあふれた。ところがここで苦況が襲った。温暖化が進んで動物相が小型化し、増えてしまった人口を狩猟では維持できなくなったのである。やむなくかれらは定住農耕を始め写真4メキシコ、グアナファトと並ぶ植民地時代の鉱山都市サカテカスの旧市街。山ふところに築かれた町なのでメインストリートが坂道Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016011