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ハウハジャングル地帯リマック川リマ山岳地帯クスコカヤオリマ旧市街地N0 100km砂漠地帯N0 5km5図2ピサロの行程図3リマとカヤオの位置関係132図4旧市街の建築立面46図1リマ市街地の平面図。赤線が城壁位置1:アルマス広場2:サン・フランシスコ教会・修道院3:城壁公園4:住宅地に城壁が残るエリア5:サン・クリストバルの丘6:かつて城壁があったと推測される位置(図中・赤点線)築されている。これは、住民が城壁の一部を勝手に撤去し住居化した跡であり、一説にはリマック川へのアクセス路や、バルコニーも設置されていたという。かつてのリマック川は市民の愛着ある場所であったのだろう。残念ながら現在のリマック川はハイウェイ等に挟まれ、市街地からアクセスしづらくなっている。城壁公園には1935年のリマ建都400周年を記念にピサロの故郷から送られた彼の騎馬像がある。かつてはアルマス広場付近に鎮座していたが、市民運動によってここへ移設されたという。撤去ではなく移設となった経緯は定かでないが、侵略という行為の一方、リマの都市骨格を明確に築いたピサロに対して、リマ市民は憎悪の感情を抱いているだけではないのかもしれない。■旧市街の課題と展望旧市街にはコロニアル様式のカラフルな建築だけでなく、キンチャと呼ばれる、日本でいう木骨モルタル造に似た構造形式の建築が一部に残っており、旧市街の街並みに厚みを与えている。しかしキンチャによる建築は地震によって倒壊しやすく、幾度もリマを襲った大地震により今では希少性の高いものとなっており、耐震補強等による保全が求められている。旧市街全体に目を6向けると、建築の高さ規制により旧市街の乱開発を未然に防ぐ等、旧市街の歴史的価値を保全する取組みが進められている。また、リマを訪れた際に最も印象に残るものの1つは渋滞であろう。特に朝夕の通勤時の渋滞は激しく、すいている時の何倍も時間がかかる。渋滞の原因は人口や政治機能等がリマに集中していることと、交通インフラが脆弱だからである。ペルーの人口の1/3となる約1,000万人がリマに住んでいる。面積と人口が東京都とほぼ同等であるのに、鉄道は1路線しかない。また自動車の運転マナーも悪く、車線変更が頻繁に行われ、クラクションは鳴り響き、現地に慣れていなければ運転は困難な状況である。旧市街には自動車が多く流入し、街の魅力が観光客には感じ難くなっている。交通量の低減策等による交通計画を含めた都市全体のマスタープランといったマクロな施策と、個々の建築の価値を保全するミクロな施策の両輪によって、街の魅力をより醸成していくことが望まれる。<参考資料>1)『EL CENTRO HISTORICO DE LIMA』(リマ市パンフレット)PROLIMA2)『CENTRO HISTORICO DE LIMA』(市街地の建築分布図)PROLIMA3)『興亡の世界史12インカとスペイン帝国の交錯』網野徹哉2008年講談社4)『ペルーを知るための66章【第2版】』細谷広美2012年明石書店5)『世界史史料7南北アメリカ先住民の世界から一九世紀まで』歴史学研究会2008年岩波書店6)『天空の帝国インカその謎に挑む』山本紀夫2011年PHP研究所<取材協力・資料提供>1)PROLIMA(リマ市)2)Beatriz Arakaki(通訳)<図・写真提供>図1 PROLIMA/加筆金野拓朗図2、3、P22上、写真5、6金野拓朗図4 PROLIMA写真1近藤安統写真2、3、7有賀圭司写真4塚本敏行Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016027