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Qhapaq Nan, the backbone of the Inca Empire, was a network of roads that spanned a distance of 50,000kmインカ帝国を支えた5万kmの道路網「カパック・ニャン」ペルー、クスコ/マチュピチュ特集土木遺産XIIIラテンアメリカ古代文明から現代文明への転換を支えた土木技術Special Features / Civil Engineering Heritage XIIIアンデス高地を縫うように走るカパック・ニャン株式会社千代田コンサルタント/社会システム部/総合計画課有賀圭司(会誌編集専門委員)ARIGA Keiji■リャマの通る道南米では毛織物で有名なアルパカをはじめ日本では見られない生き物が多くみられる。アルパカと並ぶ代表例の一つにリャマが挙げられる。体高1mほどのラクダ科の動物であるリャマは、ペルーでは約110万頭が飼育されており、食用にもされるが、主に荷役用として1日に50kgの荷を20km運ぶことができる。アンデスの高地では牧民がリャマを飼育し輸送業を生業としており、15世紀のインカ時代にはほぼ唯一の大量輸送手段であった。税として納められたトウモロコシやジャガイモを倉庫に運び、軍需品を運ぶため数千頭ものリャマが戦場まで連れて行かれたのである。しかし、昨今では自動車に押されて、その利用は盛んではないといわれている。インカ道と呼ばれる当時の道路は、多くのリャマをはじめ旅人や軍隊が行き来していた。かつてリャマがインカ帝国全域で飼育されていたように、インカ道も国土全域に張り巡らされていた。その範囲は現在のペルーを含め6カ国に跨り、太平洋岸からアンデスの高地を越え、アマゾンの奥地にまで至る、延長5万kmの世界最大規模の道路網であった。場所によってその構造や形状は様々であり、街なかの細い路地から、砂漠を抜ける幅広の道路、急峻な山道に至るまで多様な姿を見せている。しかし現在、この道路網は一部を国道等として利用している箇所があるものの、一体的なネットワークとしてはその機能を失っている。なぜ、国中に整備されていた道路網は失われてしまったのだろうか。写真1草を食むリャマ028Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016