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っている。また、小水力発電の事業化に向けては、機械・電気・土木・環境等の広範な技術分野に関する複合的な知見が必要であり、それに対応する人材が不足している。これらの阻害要因をクリアした有望地点において、民間事業者は小水力発電事業の計画段階および実施段階における様々なリスクを克服する必要がある。平沢川小水力発電事業においても、公募選定前には事業実施上の様々なリスクが想定されたが、これらを個別に解決しながら、発電計画を立案し、事業性評価を適切に行った上で事業参入を判断した。■事業性評価事業者として発電所を長期にわたり運営する決断をするためには、事業性の適切な評価が重要である。具体的には、売電収益と初期投資や維持管理のランニングコストとのバランスに留意することであり、これを具現化する発電計画にこそ事業者にとって最も重要なノウハウが詰め込まれる。売電収益では平沢川の流況曲線から、規模振りと呼ばれる収益シミュレーションにより適切な使用水量を設定し、水車選定の諸元を規定する。水車選定においては調達リスクを考慮し、流量変動に対応可能な水車で、かつ発電効率のよい形式を経済性に留意し検討を行う必要がある。支出面のコスト把握では、発電計画を実現する施設の適切な設計とそれに対応した建設費の把握、保守的すぎない維持管理計画の策定とメンテナンス費用の想定などが重要で、不可抗力リスクを考慮したコンティンジェンシーコストの積み上げも事業性に影響する。ここでは、事業性評価に影響する主な部分を紹介する。本発電事業の事業性評価に関しては、NPV(正味現在価値)とIRR(内部収益率)を指標として判断した。民間事業者がFIT制度を利用して発電事業を行う場合、建設コストに絡む補助事業の適用はできないため、資金は自己資金もしくはファイナンスによる調達が必要である。事業採算性では、資金調達(借入れ先・金利・調達期間)方法等の借入条件を定めることに加えて、運転(売電)開始後の支出に相当する維持管理費(機器メンテナンス費・人件費・保険料・各種占用料)の想定が重要である。運転開始後の収益性に関しては、売電収入に係る法人税・固定資産税等の各種納税、融資金利の返済を考慮した上で、剰余金の累計が借入金残高を上回ることで投資回収年が評価できる。本発電事業の運営期間の損益計算においては、収益は年間発生電力(約970MWh)による売電収入(約3,300万円/年)を想定している。本事業の採算性に関しては、維持管理に係る支出項目を想定して長期間における事業性評価を行い、IRR(内部収益率)3%程度と評価し、事業参入への最終判断を行った。また、事業化の際に多額の資金を投入する発電事業においては、金融機関等からの融資や出資、自己資金等による初期投資費用の資金調達の手当てが重要である。図2に資金調達スキームの一例を示す。長期にわたる発電事業において多額の融資・出資を受ける際には、各発電計画の妥当性と安定した収図2資金調達スキーム(※NiX:[niks]新日本コンサルタント社名の英語表記)Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016045