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上村:例えば奈良県橿原市の市庁舎建て替え時に、ホテルを併設することが発表されています。税金で行うサービス購入型施設と事業性のある観光拠点としてのホテルの組み合わせです。下水道とソーラー発電の組み合わせも随分出てきています。そういうものをどう見つけ、統合的にまとめていくかが、コンサルタント技術者の腕の見せどころでしょうし、それには幅広いネットワークや知識が必要です。法律、経済や金融、会計の知識も要るでしょう。最終のバリュー・フォー・マネーが国家財政、地方財政にどう寄与するのかまでの過程を、しっかり説明できるようにすることも必要になってくると思います。長谷川:今後のコンサルタントは事業手法としてPPPか包括契約か等を判定して自らも事業に参加することも大きな市場だと思っています。そのため、金融関係や法務なども我々の分野になってくると考えています。アメリカでは多くの空港で包括契約が結ばれて運営されて、市町村でも財政的に成り立たないところは、民間に委ねて効率化して、官と民の役割を明確にした運営がされています。土地や許認可の問題は官の役割として、民間は効率化の部分を担っていく仕組みが、どういった事業でどういったところで活用できるかを判定し、自ら参画することも今後の市場になると思っています。歴史をつくる仕事上村:建築では設計から施工まで行うゼネコンがありますが、コンサルタントで工事も請け負うことはないのでしょうか。長谷川:土木は公共性が高い分野なので、設計と施工が分離されていないと市民に対して品質とコストがきちんとしているという説明ができません。今後、世の中のニーズが変われば、設計から施工までを行うコンサルタントも出てくると思います。上村:ゼネコンのように設計と施工を一括して引き受けられることが、ビジネスとして色々なチャンスを生むのではないでしょうか。長谷川:建設コンサルタントは企画・設計のプロフェッショナルで、優秀な人材がいれば成り立つ職業です。現在の会員条件は売上げが1億円で450社の会員がいます。欧米のようにコンサルタントが設計と施工を一括して受けるためには、資金需要や法改正等が必要となりますが、設計施工一括による特別な価値が生まれる魅力もあるかも知れません。上村:そういうハードが何かないと、やはり飛び抜けた付加価値を生むことや人材のスター性は出難いですね。写真2電力で日本の経済発展を支えた黒部ダム1963年完成長谷川:独自性は魅力に繋がっていくでしょう。コンサルタントには、技術を習得した非常に優秀な人材が揃っています。今、我々の一番の問題は、将来の担い手がなかなかこの業界に目を向けてくれない現実です。理由の一つには、社会資本が整備されてきた中で、プロジェクトそのものが少なくなってきたことがあります。コンサルタントという職業を選べば、やりがいを持って日本の国土を創造できるのかが、見えにくくなってきています。自分たちが学んできた技術を活かして国土をどう造っていくか、未来をどう変えていくか、コンサルタントの役割が見えることが重要です。これらの役割を果たしていくためにも将来を担う優秀な人材と技術の継承が重要です。上村:私は、必ずしも日本のハードが成熟し、もうあまり造る必要がなくなったとは思っていません。2002年頃ですが土木予算が大幅に減った時、「今のハードは田中角栄時代からの列島改造論で“国土の均衡ある発展”というビジョンのもとに造られたもので、小泉内閣がしたい新自由主義的な政策を推し進めていくには、それにふさわしいハードが必要である」と言いました。進めたい未来に対して、新しいハードとしてふさわしいのかを考えた時には、いくらでも提案が出てくるはずです。世の中の外的条件はどんどん変わっていきます。今あるものも活かしながら新しいものも造る、また技術も日進月歩で進んでいきます。そういう総合力を必要とする創造性の高い仕事が、これから求められる。プロポーザルや提案型では自分の専門分野だけでなく、世界を歴史や文明史的に大きく俯瞰できる複眼的な視点が必要です。技術者がそういう複眼を持つと、すごく強い。しかしそれには新しい提案や付加価値が評価され、なおかつ高く買ってくれる仕組みがない限りは駄目だと思います。「何人で何時間かかった」という積算だけでは、面白いCivil Engineering Consultant VOL.270 January 2016003