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写真1ドーヴィルの頁岩を使用した屋根写真2デエップ城(左下は、石垣の拡大図)写真3レンガ造りの建築物(左:ブルージュ、右:ハンブルク)活気に満ちた都市であった。デエップ城は、12世紀に建てられ、現在の城は1443年に建設が開始されている。城の石垣は、白色と灰色の層が交互に分布していたが、これは、白色の部分に砂岩、灰色の部分にメノウが使われているためであった(写真2)。メノウが大量に石垣に使用されている城は日本では見たことがなく、ここでも日本とヨーロッパの違いを感じた。また、文献でしか見たことがなかったが、メノウと砂岩の岩盤強度の違いにより砂岩のみ浸食されている石垣を見られたことは、ヨーロッパの500年以上の歴史を感じる事ができ、感慨深かった(写真2の左下)。3ブルージュ、ハンブルクのレンガブルージュ、ハンブルクは、沖積層などの軟らかい第四紀層が分布しているため、硬質な石材が入手出来ない地域である。そのためか、この地域はレンガ造りの建物が多く(写真3)、石材を多量に使用する建築物はほとんど見られなかった。4アイセル湖大堤防の玄武岩アイセル湖大堤防は、オランダ北部にある世界最大の堤防であり、アイセル湖と北海を仕切っている。この堤防は、護岸に玄武岩の柱状節理を使用していた(写真4)。これだけの石材を一体どこから運んできたのだろうかと、現場で団員の方々と議論を行い、その場では、柱状節理で有名なアイスランドから船で運んできたのではと考えていた。疑問に思い、帰国後に調べたところ、ドイツのアイフェルの採石場から運ばれていた事が分かった。アイフェルの位置を地質図で確認すると、ドイツの中央部に赤色の火山岩が分布している事(図1)が分かり、よくこんな遠くから運んだなと感動したものの、どのように運搬したのかと新たな疑問が生じてしまった…。■ヨーロッパの地質とインフラの関係以上のように、ヨーロッパのインフラ(特に石材)は、地質分布との関係性が深く、その地域の地質を反映した構造物を建築していることが分かった。ドーヴィルや玄武岩の柱状節理を護岸に使用写真4アイセル湖大堤防北海デエップなどの中生代の硬質な堆積岩が分布している地域は石を多量に使用する建築物が多く、ブルージュやハンブルクなどの軟らかい第四紀層が分布する地域ではレンガ造りの建築物が多い事が確認できた事は、非常に興味深かった。■おわりに今回の視察では、11日間でヨーロッパの様々な地域を視察し、その地域の状況を知ることが出来た。特に、ヨーロッパでは人口が数千~数万人の小さな街であっても、地域の特徴を活かした街づくりが行われており(私の視点では石材が主ですが…)、住民の方も自分の街に誇りを持っているためか、地域に活気を感じた事が印象的であった。今回の視察を通じて得た知識や経験を業務に活かすことは勿論、日本の地質とインフラとの関係についても調べてみたいと感じた。最後になりますが、貴重な視察に参加させて頂いた中村団長、建設コンサルタント協会の皆様、みなと総合研究財団の皆様には大変お世話になりました。ここに深くお礼申し上げます。<参考文献>1)日本列島と欧米の地質、地質調査業協会HP(http://www.zenchiren.or.jp/tikei/oubei.htm)アイセル湖Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016065