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い人が来なくなることを、経営者は危機感として持つべきで、ここが正念場です。上村:建設コンサルタント業界は、公共が発注者だけに、女性活躍推進は比較的やりやすいと思います。出産や育児を仕事と両立させられなければ女性は続けられませんが、それを原価に必要コストとして組み入れられると思います。一般の企業は、それでは価格競争で負けてしまうので、なかなか組み入れられません。しかし官の発注だけに、業界全体として女性を優遇していく制度をつくる。世の中全体が原価の必要コストとして上乗せし、それで成り立つビジネスに持っていく潮流になれば、目指すべき理想に近づくことは間違いないと思います。仕事が楽しい業界長谷川:我々の業界は単年度の仕事なので、3月に納期の70%程度が集中します。民間企業ですから、生産と受注のバランスが取れなければいけませんが、繁忙期には2~3倍ぐらいの労力が掛かり、平常時に抱える人数と労力の関係が大きく違ってきます。そのため年度末は、長時間労働にならざるを得ません。財務の関係で現在は単年度予算になっていますが、早期発注や翌年への工期延期を始め、繰越や翌債が多く活用されるように要望しています。上村:その工夫は要りますね。こういう知恵の職種が難しいのは「造りだめ」ができないからですね。長谷川:発注時期はできる限り前倒しする方向で、努力していただいています。例えば3月の工期が70%になっているものを45%に減少して欲しいと、協会から要望しています。上村:長時間労働で「大変なのだ」という視点だけではなく、ある意味、「楽しいことや好きなこと」が仕事になる恵まれた業界という意識にしたいですね。ずっと楽しいことをしているから、仕事という意識がないと思えたらすばらしい。恵まれた、うらやましい仕事だということが、もう少しベーシックにあってもいいと思います。いわゆるジョブではなく、プロフェッションですよね。だから「24時間ずっと楽しいことを考えているのは、そう大変でもないやりがいある仕事」ではないでしょうか。長谷川:この業界に来る方は全て、この仕事を望んで入って来ます。働き方の多様性で、例えば在宅勤務とか、いつでもどこでも働けるようにし、それを価値にして積算できる仕組みになると、少し変わってくるかもしれません。上村:この業界では、優秀な女性が育児や家事をしながら在宅ワークをすることも可能ですね。仕事に波があ写真4東京ゲートブリッジ2012年開通るのなら、忙しい時はそういう方たちの短時間労働も組み合わせできる、そういう人をプールしレベル生産しておく、そういう工夫の余地があります。そして、仕事をすること自体がとても楽しい業界でお金にもなる循環に切り替えていきたいですね。今回、詩人のグループで雑誌『道路』に2年間連載したものを『道の詩学-道ありて道を思う-』として本にまとめました。土木のことを全然知らず、純粋に「道」とは何か、というようなことを考えて書いた詩が大半です。道だけではなく土木全般に言えることですが、人間としてどう生きていくのか、自分たちは、社会は、どこから来てどこへ行こうとしているのかと考える必要があります。切れば血が出る生身の人間は一人では生きていけません。村落を造り、共同体を造り、国家を造る時に、道具立ても沢山要るわけです。土木の場合は自分が暮らし生きていく原点としての大道具である社会インフラに関われることに対して、とても楽しいことだと思える。「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」わけで、自分が進んでいく所に、いろんなハードができていく。土木の力で進んでいきながら、歴史をつくっていく。そういう原点に絶えず立ち返っていくことが大事ですし、そこがプライドや誇りだと思います。長谷川:自分がしていることにプライドを持ち、それが歴史を切り開く、やりがいに繋がる事が非常に大事ですね。上村:自分の専門と世界の全体をリンクさせ俯瞰する。担っているプロジェクトは小さなパーツかもしれないですが、地域の中で、国の中で、世界の中で、どういう意味を持つものなのかを絶えず検証して、自分のポジションを確認すると、重要さが浮かびあがってきます。それが誇りに繋がっていくと思います。<写真提供>P1、写真3、4初芝成應写真1塚本敏行写真2惣慶裕幸Civil Engineering Consultant VOL.270 January 2016005