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『道路緑化技術基準』の改訂街路樹は、無機的な景観になりがちな街において、生命観のある自然を感じさせてくれる存在であり、四季の彩りや潤い、癒しなどを与えてくれる。しかし、街路の大きさと樹種が調和しているところは少ない。街路空間に対して街路樹が成長することで、オーバースケールになった街路樹は、強剪定によって樹形の抑制が行われる。街路が街路樹にとって樹形の維持からも厳しい環境となっている。街路樹の設計にあたっては、街路の大きさに合った樹種を選択することを考える必要がある。平成27年、街路樹を設計する際に基本となる『道路緑化技術基準』が27年ぶりに改訂された。社会資本として位置づけられている街路樹が、その目的を果たすには道路の機能を損なう存在になってはいけないということがある。また、街路樹が機能を発揮するには、健全に成育している必要がある。都市の緑の量を求めていた時代から内容を見直すことがなく今日まできていたが、緑がグリーンインフラと言われるように、その価値を認識する社会になってきた。都市で生活するには緑を良好な社会資本として位置づける必要性がある。主要な改訂内容は、道路の安全・安心を担保する街路樹の植樹計画を立てること。街路樹の樹形の崩壊や生育不良などその機能が損なわれたものは樹種変換を進めることを示したことである。これまで、街路樹は樹形の崩壊や成育不良のものでも、枯死するまで撤去や樹種変更は行われていなかった。ある意味で無機的な社会資本と同じように扱われてきたともいえる。今回、街路樹を生き物として取り扱うことが出来るようになった。大手町の森街なかには、都市再生に伴って生まれる樹の集団がある。都市再生特区の指定を受けることで一定面積の緑地が確保され、さらに緑地の設計にあたっては自然の再生や生物多様性をコンセプトにすることが多くなってきている。丸の内の仲通りと永代通りの交差点に面した「大手町の森」も、この方法によって造られた樹の集団、いわ写真6 街に季節感を与えてくれる紅葉したモミジバフウの街路樹。街路の大きさと街の雰囲気に調和する樹種を選択することが重要ゆる森である。この森は、東京の郷土の森というコンセプトの下で設計し造られたものである。そもそも大手町に郷土の森を造るにあたって、この界隈には情報源とする森は存在していない。東京湾に面する崖線上には郷土の森に類する植生を見ることが出来るが、常緑樹を主体とした森であり、ともすると鎮守の森を構成する樹種であったりする。これらの樹は、大手町の街に造る森としては、街と調和しにくい樹種である。そこで生物多様性という観点からも、生き生きとした状態の森を造り出すための樹木を含めた植物構成を行った。落葉広葉樹を構成種として加えると同時に、その割合も約6割と常緑樹よりも多くすることで林床を明るくすることができた。この結果、多くの植物が林床で成育することができるようになり、四季に応じた植物の特徴をみることが出来るようになった。人工地盤上の森この大手町の森は、森造りに様々な創意工夫が盛り込まれているが、植栽基盤にも特徴がある。大手町の森は、地下を活用するための構造物の上に造られており、人工地盤の上に造られた森である。樹高の高い樹木を支えるための地上の支柱は、景観的にも好ましいものではない。したがって樹木の根鉢を植栽基盤の土だけで支えるようにするためには、軽量骨材はほとんど使わず、畑土と関東ロームを混合したものを平均100cmの厚さで整備した。もちろん植え付け時には、根鉢を地下のアンカーで固定した。この土壌は、保水性がよく林床008Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016