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特集まちと樹の共生?木との付き合い方を探る?2街路樹の歴史とこれから渡辺一夫WATANABE Kazuo森林インストラクター農学博士街のなかの樹として最も身近な存在である街路樹。人に植えられて人に管理されている街路樹は、「まちと樹の共生」の典型例といえる。街路樹はどのような経緯を辿って今のような姿をみせているのだろうか。また、これから街路樹とどのように付き合っていけばよいのだろうか。よく植えられている街路樹は都市に住む人々にとって、街路樹はもっとも身近にある樹木の一つだろう。実際、全国には700万本近い街路樹が植えられている。では、街路樹と聞くとどんな木を思い浮かべるだろうか。平成24(2012)年の国土交通省の統計によると、全国に植えられている街路樹(高木)で、最も本数が多いのがイチョウである。2位がサクラ類、3位がケヤキ、4位がハナミズキ、5位がトウカエデである。街路樹には、枯れにくい強さ、美しさ、管理しやすさなどの条件が求められる。イチョウは大気汚染や剪定に対して強いこと、黄葉の美しさからここ数10年間1位を保ち続けてきた。2位のサクラ類は花がきれいであり、3位のケヤキは樹形が美しく頑健である、といった理由でよく植えられている。ただし、街路樹には気候や文化を反映した「地方色」がある。北海道では、寒冷な気候を反映してナナカマドが最も多く、アカエゾマツといった北海道ならではの針葉樹もよく植えられている。九州ではクロガネモチやクスノキといった常緑樹が目立つ。街路樹のさきがけ平安京に柳の並木が植えられたように、古くから街路樹は存在したが、近代都市の街路樹の歴史は明治に始まる。東京では、明治末になるとそれまで植えていた柳や桜を改め、近代都市にふさわしい街路樹を新たに選び、植栽する事業が始まった。その際に、林学者の白はやと沢保美や園芸の専門家である福羽逸人らが国内外の樹木を検討し、イチョウを含む10種類の街路樹を選んだ(表1)。その多くが外来種であり、特にプラタナスやユリノキなど風格のある洋風の木は早くから試験的に植栽された。一方、ミズキ、トネリコ、アカメガシワなど日本でごく普通に自生する在来種も選ばれたが、これらは成育が悪かったこともあり、実際にはほとんど植えられなかった。こうして外来種を基本とする樹木の苗木が育てられ、日本の街路樹のさきがけとして東京の街路に植栽されていったのである。街路樹の変遷太平洋戦争中は空襲などで街路樹は減少するが、戦後、全国の街路樹の本数は増加の一途をたどる。しかし、その樹種をみると、使われる街路樹にも「はやりすたり」があり興味深い。時代の流れとともに、街路樹に対するニーズや評価が変化していることが伺える。表2は昭和29(1954)年、昭和57(1982)年、平成24年の統計で、全国に植栽されている街路樹(高木)の樹種(上位10種)や本数を示している。約60年の間に全国の街路樹の総本数は20倍に増加しており、使われる樹種も年とともに多様になってきている。樹種の変遷をみてみよう。イチョウやサクラ類は、昔も今も変わらずによく植えられている。一方、かつて上位表1明治の末に東京の街路樹として選定された樹種イチョウ(外来種)トウカエデ(外来種)プラタナス(外来種)エンジュ(外来種)ユリノキ(外来種)ミズキ(在来種)アオギリ(外来種)トネリコ(在来種)トチノキ(在来種)アカメガシワ(在来種)010Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016