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特集まちと樹の共生?木との付き合い方を探る?4制約の先に生まれる風景宮田生美MIYATA Fumi株式会社ゴバイミドリ代表取締役空間の限られる街なかで新たに緑を植え育てていくために、近年では建物の屋上や壁面などを活用した緑化の取り組みが進められている。様々な工夫を凝らして街に緑を持ち込む、新しい街と緑との付き合い方は、人と緑の関係にどのような変化を及ぼしているのだろうか。都市側の制約東京では、窓外に樹々の緑を眺めながら暮らすことは贅沢なことになってしまいました。それは東京に限らず市街化された場所なら同じような事情であろうと思います。植物を植えるためには土が必要です。コンクリートやアスファルトで固められた都会には土がありません。それでも植物を植えようとすると「植栽基盤」が必要になります。ビルや屋上に植栽することを特殊空間緑化と呼んだりしますが、1階の外構であっても地下に駐車場があるなど地植えできないことも多く、そのような場合は人工的な植栽基盤をつくることになります。人工地盤上に植栽する都市の緑化には様々な物理的制約があります。建物の荷重条件に合わせて軽量であることが求められるのもそのひとつです。場合によっては建物と同等の耐震、耐風圧性能を要求されることもあります。さらに耐久性においても建物と同等であることを考慮しなければなりません。地面に植えている訳ではないので、人工的な潅水に頼らざるをえない面があり、それもまた都市緑化の課題のひとつです。施工にあたっては、比重が軽く保水性のある土壌を用い、安全基準を満たした固定方法を工夫するなどして、これらの課題を解決することになります。土のないところで、いかに植物が健やかに長期間育成できるか、それが都市緑化技術の要締であり、それは植栽基盤のつくり方にかかっていると言ってよいと思います。植物は根を張って成長します。植物の種類やサイズに応じて、根が成長できる空間(植栽基盤の大きさ)を確保し、潅水と排水、そして通気を担保することが重要です。それらは先にあげた都市側の制約やコストとのバランスで決定されます。時間経過によって土の組成が変わらないことも大切なポイントです。何十年たっても土を入れ替えることなく植物が元気に育つことが必要だからです。建築設計に求められること植物が健全に育つための条件づくりは、緑化事業サイドにあると考えられがちですが、実は建築サイドが、その鍵の多くを握っています。建物の設計において「こういう緑をデザインする」という意図が明快で、それを可能にする設計ができていれば、無理なく緑化は進みます。植栽低木、草本類側面植栽テイカカズラ植栽中低木金網・カゴウェーブメッシュパネル人工土壌アクアソイル内貼りシート図1 5×緑(ゴバイミドリ)の緑化ユニットの構造。軽量で保水性の高い人工土壌(アクアソイル)を充填した金網で植栽基盤をつくり、側面にもツル植物を植えて、植栽基盤そのものを緑化する。植物は日本の在来種を使い、多種混植の緑を提案している018Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016