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写真1ワークスペースから窓外に見える風景。5×緑に植えられた在来種の柔らかい緑が心を和ませる写真2 在来種の混植が生み出す繊細で多彩な緑の表情。緑は単色ではないことを教えてくれる第一に、植物の種類やサイズに合わせた植栽基盤をつくることのできる空間や、荷重条件が合理的に設計されているかどうかが緑化の難易度を左右します。一般に、植栽基盤は薄層になる程乾燥しやすく、乾燥に耐える植物を選定するか、潅水量を増やすか、メンテナンスでカバーすることになります。植栽基盤にゆとりがあれば植栽する樹種の自由度はあがります。その他にも以下のような諸点が建築設計上のポイントになります。1潅水都市緑化においては必要に応じて自動潅水装置を使いますが、各々の緑化システムに合った衛生設備のスペックになっていることが必要です。しかし、水の量は少ないに越したことはなく、雨水の利用や上階の排水の再利用などはもっと配慮されてよいのではないかと思います。一方、植栽基盤が十分取れれば雨水のみで植物を維持することも可能です。2排水と通気植栽基盤内の排水や通気は緑化システム側で確保しますが、植栽基盤から流出する水の処理は建築サイドで解決する必要があります。これは意外と忘れられがちなポイントであり、水の処理が適切に行われず滞水してしまえば、植物の生育にも影響します。また、ドレーンは日常的に無理なく点検・清掃が出来るようにしておくことが望まれます。3メンテナンス植栽の成否はメンテナンスにかかっているといっても過言ではありません。植えた草木は剪定が必要です。潅水チューブの点検や交換も必要で、将来必要なメンテナンスの作業を見越して、作業可能な設計にしておくことが大切です。生き物を相手にしていることを忘れてはなりません。都市の緑の量と質都市緑化の技術が進展すると共に、屋上や壁面緑化の面積も増えています。国土交通省の調査によると、平成12~25年の14年間で、少なくとも屋上緑化は約383ha、壁面緑化は約62haが新たに創出されたといいます。ただし、全国的に緑被率は減少しています。森林や農地の減少がその要因です。様々な施策が都市の緑の創出を後押ししてきました。景観工学の研究者である真田純子氏の著書『都市の緑はどうあるべきか』(技法堂出版)によると、「オリンピックが終わって開発ムードもひと段落した1960年代後半になって、『緑』には『環境対策』という明確な役割が付与され、(中略)都市内の緑地の確保や緑化は義務化されることに」なりました。ここで特筆すべきは「緑が制度化されることにより、緑の本質が見えなくなってしまった」と指摘している点です。緑の義務化を機に「『われわれにとって緑とは何か』『都市において緑はどうあるべきか』といった緑の本質に立ち返る議論が、面白いように消滅する」と言っています。コトを外部化し、対象化し、数値化することで本質が失われるのは緑に限ったことではありません。数値化することで、数字の達成が本来の目的にすり替わってしまうことはよくあることと言えましょう。植栽計画はしばしば、まず制度上要請される緑化面積を充足することを起点に検討され、外構で賄えない緑地面積が壁面や屋上に割り振られます。このようなアプローチには、そこにいる人にとってどのような空間でCivil Engineering Consultant VOL.273 October 2016019