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Consultant273

雑木林など様々な緑地の実地検分を行い、武蔵野市境山野緑地、野川公園など6か所を自然林のモデルケースとして抽出し、詳細な調査を行った。審美性、自然の豊かさや多様性、生育の健全性などを評価軸として比較するなかで、「緑がお互いに競争しながらも一定のまとまりを形成し共存している姿」により、高い自然感を表出することが可能であると把握できた。・高木植栽計画設計上の方法論としての以下の3つのルールを抽出した。【疎密】主景木副景木添景木低景木負け木多様性と奥行き感の高い自然林の構成要素として、林床の光と影のコントラスト、日照条件の異なる自然の多様性を高木群の密度の対比「疎密」により実現する。疎密の設計では5~15本程度の一群の高木を、100m 2に8本以上という高密度でまとめた樹林をユニットと呼び、3つの異なるタイプを設定する。一方、樹木を植えないギャップとユニットを組み合わせ全域に分散配置し、多様な環境を創出する。【異齢】ユニットの構成は、目通りが大きく景観の中心となる主景木、やや小ぶりな副景木、目通りの小さな添景木など、異なる樹齢の多世代が混在する一群の樹林からなる(図2)。自然林には他の樹木の間のわずかな光を求めて徒長した木も存在しており、これを負け木と称し一部に組み込む。【混交】植生遷移が最終段階まで進むと林内が暗い照葉樹林へと森は移行するが、大手町の森は緑陰や木漏れ日の下で人々の憩いや触れ合い、生き物との共生を実現する空間を目指している。その遷移の過程で常緑樹と落葉樹が混交する若い森(常:落=約3:7)を目標とし、多様な樹種から構成され四季感の豊かな緑地の形成を目指している。常落の配置においては、ユニット内では常緑樹の北側には落葉樹を置かないなど相互の被圧関係に配慮している。樹種の構成については大手町の地理的、気候的立地特性を踏まえ、洪積台地に接する沖積低地の「イノデ-タブノキ群集」、斜面地の「ヤブコウジ-スダジイ群集」、武蔵野台地上部の「シラカシ群集」の各群集の潜在自然植生や随伴種から樹種を選定している。図2異なる年齢の樹木が構成するユニット特徴的な樹種として浜離宮から武蔵野台地東端に至る場所で、本来自生していたにも関わらず、現在では芝公園の斜面地などの一部でしか見られないアカガシを、この土地の固有種として採用している。また高木および地被類は全て関東圏内から調達し、遺伝子的な攪乱を極力抑えるよう配慮している。・林床を豊かに彩る地被類計画地被類は地形や景観、日照の特徴による区分を大きく捉えてゾーニングを行い、ゾーン毎にランダムに植栽する。樹種は都市近郊で普通に見られ健全に生育すると考えられるものの中から、1ベースとなる基本種(常緑種主体:5~15種/m 2)、2林床を彩る春植物(カタクリやニリンソウ等)などの群生種(落葉種主体:1~14種/m 2)、3景観に変化をつける点景種の3タイプを重ね合わせ、年間の緑被維持と季節感や景観の多様化を図る。自然の森のモックアップ「プレフォレスト」設計時に構想した自然の森の計画手法の有効性を実証するために、「プレフォレスト」と称す取り組みを実施した。本施工の前に大手町の森の一部を千葉県君津市の圃場に施工し、地形や人工地盤、土壌などの条件を同等にした上で、森の生育や管理手法等について3年間に渡り検証を重ねた(図3)。その結果に基づき、高木については片枝木など通常の造園工事では使用しない樹形が基本となるため、向きや傾きの調整など組み合わせ植栽の施工に時間がかかるが、事前にそれぞれの樹木についてデータベース化し組合せを想定する方法を採用した。一方、地被類については日照や地面の起伏など土地の環境が生育に及ぼす影響を、自動計測機等も利用して経過観察を028Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016