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写真1魚道施工前(落差=1.4m)写真2魚道施工後(落差=0.3m/1段)■魚道としての移動の機能対象魚は回遊魚であるアユだけでなく、市木川に見られる底生魚やより遊泳力の弱い魚も設定した。そのため、一段当りの落差は30cm以下に設定するとともに、以下のような工夫を行った。・各プールを踏み段状に配置することにより、ジグザグのルートを通った場合の斜め方向の落差が15cm程度になるようにして、より遊泳力の弱い魚類に配慮した。・越流部には石組み構造を採用することにより、多様な水深・流速が発生し、遊泳力の弱い魚が、好きなルートを選べるようにした。また、底生魚が石材同士の隙間を移動することを期待した。・魚道最下流部に円形の淵を創出することで、この部分に洪水時に水が集まり土砂が排出されることにより、常時水深が維持され、魚類が助走区間として利用できるよう計画した。■自然景観魚道の景観は、市木川の条件から自然に出来る河床の姿に近づけることを目指した。魚道の上下流の河床勾配は1/250であるが、魚道の部分は1/10であ写真3施工指導状況写真4石材間の空隙る。そこで、魚道の形状は山地河道の河床形態であるステップ&プールをモデルとし、小規模な瀬と淵を創出する計画とした。魚道上流側は対象区間外であったため、下流側の河道において魚道の方向と帯工の方向を若干左岸側に寄せ、水の流れを魚道下流で蛇行しやすくし、洪水時の侵食・堆積作用により瀬と淵が生じると推測した。また、魚道の両河岸の水際に根固め工を設置した。水衝部側は急勾配の石積みとし、石材の空隙に魚類の隠れ場を創出する計画とする一方で、水裏側は土砂が堆積し、緩傾斜の河岸が生じることを期待した。■設計内容を実現するための■施工指導他現場の施工実績から、施工会社によって構造物の出来上がりに差があり、同じ設計内容でも、担当す魚道側部(根固工の前面)の石積みに空隙が見られる状況。る施工会社により考え方が伝わり難い場合があることが分かっている。そこで、多自然川づくりを数多く施工した経験のある石工さんから、担当する施工会社の石工さんに直接指導を行い、技術を伝える事を試みた。特に、コンクリートを使った練石積みの構造でも、石材の形状を活かした空隙が出来るような土佐積みと呼ばれる石積み方法(崩れ積みの一種)を根固工前面および越流部の下流側に取り入れ、魚道機能の向上に取り組んだ(写真3、4)。■遡上調査遡上調査では、魚類がオイカワ、カワムツ、ヌマムツ、アブラハヤ、カマツカ、その他生物がモクズガニ、ミナミヌマエビ、ニホンイシガメを定置網により採捕確認した。オイカワとカワムツ類はいずれも体長5.0cm程度の個体が多く遡上Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016037