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資源であり、クサールに上って山頂から周囲を眺めると、山の傾斜から流れた水を堰止めて、少しでも畑に水を流そうとしている工夫がよく分かる。クサールの中の個々の倉庫には軒の内壁に装飾が見られる。表札代わりなのか、それは手形や絵や文字など様々で面白い。外から見ると全く同じ倉庫なだけに、他人の倉庫と間違えないためだろう。クサールを巡って分かったことは、いくつかタイプがあることだ。多くは丘の上で誰も使用せずに修復されてようやく原型が分かるものだが、低い場所に設置されているものは現役で状態も良く、生活に馴染んでいる。これは当時要塞として使用していたものが、外敵に征服され生活が安定化していくに従って、その機能が要塞から大規模な倉庫や人々の集まる市場へと変わっていったことによる。余談だが、このタタウィンは映画『スターウォーズ』のロケ地としても有名だ。実際に砂漠の星「タトゥーウィーン」の街として登場し、ロケ地となったクサールは現在ホテルとして営業されている。縦穴住居の集落『スターウォーズ』のロケ地としてもう一つ有名な場所がマトマタである。メドニンから西の内陸に入った高台の街で、沢山の縦穴住居がある場所だ。衛星写真で見るとこの集落にぽつぽつと穴が散らばっていることが分かる。地面に巨大な縦穴を掘って、さらに一室分の横穴を掘り進んで住居としている。縦穴一つにいくつもの横穴があり、そこで生活することで、地上からは住居があるように見えない。これもクサールと同じく外敵から守るための知恵であ写真5マトマタの縦穴住居る。そして、この縦穴住居もやはりホテルになっている。暑い日には結構快適で、これなら冷房無しでも過ごせそうだ。気候日中、屋外に出ると周囲に日差しを遮るものが少なく暑い。乾いた地面から舞い上がる砂を吸い込み喉も痛い。滞在期間中、一度も雨に出会うことが無かったが、一日の最高と最低気温を確認するため毎日天気予報はチェックしていた。最高気温が40℃を超す日に水分補給を忘れると、2時間移動しただけでバテる。これで体調を崩した時は、水も食事もすぐに体から出て行ってしまい大変苦労した。最高気温が45℃を超えた日は、空気も自分もあまりに乾いていたせいか、車のドアノブに触れた時にビリッと静電気が発生して驚いた。天気予報はほぼ毎日晴れマークなのだが、たまに見慣れない波のようなマークが現れる時がある。よく見ると「晴れ時々砂塵」と書いてある。砂塵の日はいつもと違って空が白い。舞う砂の量が少なければ特に気にならないが、酷い時は雨が降るのではないかと思うほど空が暗くなり、霧がかかったように視界が悪くなる。塩湖マトマタから西に進んだ所にジェリドという巨大な塩湖がある。この先さらに西に進むためには、この湖の中央を約50km真っ直ぐに突っ切らなければならない。ここを通る時に酷い砂塵に見舞われた。数10m先を走る車両すら全く見えない中、真っ直ぐに進む。もし前の車両がスピードを急に落としたり、対向車が車線を見失ったりしてきたら一大事だ。このリスクは確かに事前に知っておきたい。砂塵に突入してからでは、停車しようにも湖の道には路肩も無く、とにかく前に進むしかないと諦めかけたところで急に視界が晴れた。そして湖の上で砂塵が切れ、雪原のような真っ白な景色が現れた。水がほとんど干上がった塩の地平線が広がる巨大な湖である。道の途中にわずかにある休憩所で車046Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016