ブックタイトルConsultant273

ページ
7/60

このページは Consultant273 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

Consultant273

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

Consultant273

から待っててね」という子もいました。子どもたちが色々なことを書いてくれたことをみると、心の中の会話が成立したようです。マイツリーを持つことは子どもたちにも必要ですね。植物にはそんな力があります。確かに会話はできませんが、木は黙って全てを受け入れてくれますから。でも子どもたちが「私の悩みを聞いてくれた」「僕の嫌なことを聞いてもらって心が軽くなった」「気持ちが温かくなった」というようなことを書いてくれるとは思ってもみませんでした。この子たちが大人になっていく時に、この時のことをふっと思い出してくれたらいいと思います。実はもっと嬉しかったことがありました。後日、担任の先生から「物を言わない女の子がしゃべってくれるようになりました。乱暴だった男の子が穏やかに学校生活を楽しむようになりました。木の授業がこんなに子どもたちの心を変えるとは思ってもみませんでした」というお手紙が届いたことです。その男の子は、他の子がサクラやマツ、ケヤキなどの大きな木を選んだのに小さなキンカンを選びました。「あなたはどうしてこのキンカンを選んだの」と聞くと、「おばあちゃんの家にあって、花が咲くといい匂いがした。僕が風邪を引いた冬には、これを甘く煮て食べさせてくれた」と言いました。きっとおばあちゃんに愛されていて、おばあちゃんのことが大好きだったのでしょう。だから、おばあちゃんを思い出して、穏やかになってくれたのかもしれません。マイツリーを作ると、四季の移ろいに敏感になったり、ちょっとした楽しみや発見ができたりします。ぜひ皆さんには街路樹でも、通勤途中のバスや電車で見かける木でもいいので、自分の木を選んで欲しいです。「花が咲いたな」「花が終わったな」「葉っぱが出てきたな」「セミが鳴いているな」など、会話をしなくてもその木によって心が穏やかになれたり、季節を感じたりできる、そういう素材です。人には言えないことを木に話かける、マイツリーはそんな存在であって欲しいと思います。国分寺市立第四小学校(写真:塚本敏行)塚本こなみTSUKAMOTO Konamiプロフィール静岡県磐田市生まれ。環境緑化コンサルタント。22歳で日本造園を得意とする造園家と結婚。夫の仕事を手伝ううちに、樹木の世界に足を踏み入れ、自身も一級造園施工管理技士を取得。1985年に緑化工事を行なう(株)グリーンメンテナンスを設立。1 9 9 2年に女性として初めての樹木医資格取得。1 9 9 3年に造園、緑化、樹木の保護などを事業とする自身の会社を設立。1996年に「あしかがフラワーパーク」の大藤移植を成功させ、園内の造園設計も担当。2 0 0 0年同パーク園長に就任。2 0 1 3年から「はままつフラワーパーク」を運営する公益財団法人浜松市花みどり振興財団理事長に就任。公益財団法人静岡県観光協会理事。浜松市文化財保護審議会委員。TVへの出演も多い。著書に『塚本こなみ花みどりの心?樹恩の日々?』『おおふじひっこし大作戦』等。Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016005