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写真3 厳しい屋上の環境に対応した樹種の選択と土造りや灌水設備による環境緩和を施した屋上緑化(JA国分寺)。植物の性質を上手く組み合わせている写真4 構造物に覆われた巨大都市東京の街の中に浮かぶ緑の孤島、明治神宮の森。手前の緑の並木は明治神宮への表参道排水され地中に浸み込む量は僅かである。被覆された地表は雨水の浸透のみならず通気性も不良にする。このような環境として典型的なものが街路の植樹桝である。僅かな地表の開口部とともに、樹木にとって重要な根が生活するための土の空間も制約されている。車道側は路盤の基礎によって根が伸長することができない。歩道面は舗装によって通気透水が不良な状況になり、その先には構造物の基礎がある。辛うじて植え桝の開口部の大きさ相当の広さで、街路樹の根系が植え付けられる深さまでが客土され、根の生育空間が確保されている。この土の量では、街路樹を植え付けた当初の生活は担保されても、活着後の成長に伴う根の生活を担保することは困難である。街路樹の資質として、樹勢の強健なことがあげられる。具体的には土が不良なことから、土が痩せていても成育できること。道路は乾きやすいことから乾燥に抵抗力のあること。路面は反射熱も強いことから乾燥と共に強い太陽熱にも耐える必要がある。道路環境の特性から大気汚染に耐えることも求められる。さらに厳しい生育環境は、樹木の健康状態を悪化させやすいことから病虫害に対して抵抗力があることと、植え桝の厳しい土の環境では深根性の根でも入りこみが浅くなりがちになることから、初めから浅根性ではなく、深根性の樹木が望まれる。今日では、日本各地で街路樹として約200種の樹木が植えられているが、必ずしも街路の環境に適応しているとは言えない樹種や、街路樹として備えるべき樹形の特性をもっていない樹種が用いられていることがある。明治40年に東京市は、トチノキ、アオギリ、サクラ、イ写真5 原生林と見間違えるほどに成長した明治神宮の森。約100年前に周到な計画の下に将来の森の姿を想定して造営されたヌエンジュ、エンジュ、トウカエデ、ユリノキ、スズカケノキ、イチョウ、トネリコの10種を街路樹種として選定した。昭和29年に東京都は、イヌエンジュをニレに代え、ケヤキ、ポプラ、ニセアカシア、ヤナギの4種を加えて14種とした。これらの樹種は、先の樹勢が強健なことに加えて、樹姿が優美なこと、樹性が衛生的なこと、剪定に耐えること、上長成長が旺盛などの条件を備えている。東京都が選定した14種の中には、現在、著しい都市化による街路環境の悪化で利用されなくなった樹種や、すでに姿を消した樹種もある。Civil Engineering Consultant VOL.273 October 2016007