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表1ダムの諸元名称完成年構造堤高堤頂長貯水容量カタラクトダム(Cataract Dam)1907表面遮水壁型年(直線)重力式56m247m9,430万m 3コルドーダム(Cordeaux Dam)1926表面遮水壁型年(曲線)重力式57m405m9,364万m 3エイボンダム(Avon Dam)1927表面遮水壁型年(曲線)重力式72m223m21,436万m 3ネピアンダム(Nepean Dam)1935表面遮水壁型年(曲線)重力式82m216m7,017万m 3■ダムの建設しかし、これでも一時しのぎに過ぎなかったことが明らかになる。1901~1902年にかけて、またシドニーに大干ばつが訪れたからだ。そのため、4つの川の上流にそれぞれカタラクト、コルドー、エイボン、ネピアンのダムを造る計画に至った。1902~1935年の間に建設されたこれらのダムに水を貯え、供給出来る水量を約9倍に増やしたのである。4つのダムはコアに砂岩ブロックを使った巨石積みで造られている。それらは両岸のタワーからケーブルを張って運んだ。重さ約10tの運搬が可能なケーブルはアメリカから購入し、同時にエンジニアも来て設置した。これらのダムのうち、カタラクトダムの上流面遮水壁がプレキャストのコンクリートブロックとなっているほかは、上下流面遮水壁はコンクリートからなる。コルドーダムとエイボンダムの監査廊入口は、当時の人々がエジプト学(エジプトロジー)に魅了されていたことから、エジプト様式となっている。エイボンダムにあるジグザクの洪水吐きは、流入長を長くして多量の水を放流させるためである。ネピアンダムでは両岸の移動のために吊り橋が架けられた。それぞれのダム建設作業員のために、当初はテント村だったものを町として造り換えた。町には学校、ホール、病院や救急車が備わっていた。ダムが完成するたびに建設装置と建物が解体され、多くの作業員と共に次のダム現場へ移動した。1995年、カタラクトダムはその建設の偉業を称え「ナショナル・エンジニアリング・ランドマーク」に認定された。■人口増加に伴ってシドニーの人口は1888年の約30万人から、1939年にはその5倍の150万人へと増大していた。そして1934~1942年の8年の間、シドニーは再度干ばつに見舞われることになった。これによりワラガンバダムの建設が進写真7ワラガンバダムと補助洪水吐きんだのである。1948年に建設が始まり1960年に完成した重力式コンクリートダムで、堤高142m、堤頂長351m、貯水容量20億m 3。「ヒューズ・プラグ」と呼ばれる土と岩石で出来た補助洪水吐きは、水が越流する程になると、この土と岩石も一緒に流れ落ちる。ダム本体の損傷を防ぐ役割を持ち、日本には無いシステムだ。小規模の水力発電所も併設されているワラガンバダムは、シドニーとその近郊に住む370万の人々に美味しい水を供給している。これが建設されたことで4つのダムからの水は、シドニー近郊の小さな町への供給に変更されたが、今でもシドニーの水の平均20%を供給し、最大40%までの供給が可能だ。さらに、ワラガンバダムのメンテナンス等の際には、バックアップ機能として活躍している。(文塚本敏行)<参考資料>1)『Celebrating 125 years of the Upper Nepean Scheme』Sydney CatchmentAuthority2)『DAMS OF GREATER SYDNEY AND SURROUNDS Upper Nepean』WaterNSW3)『Sydney’s Upper Nepean Water Supply System』Sydney CatchmentAuthority4)『Upper Nepean』&『Warragamba』WaterNSW 20155)「WaterNSWホームページ」(http://www.waternsw.com.au/home)6)「NSW Office of Environment and Heritage(OEH)ホームページ」(http://www.environment.nsw.gov.au/heritageapp/ViewHeritageItemDetails.aspx?ID=4580004)<取材協力・資料提供>1)Engineering Heritage Sydney(Michael Clarke/Stephen Lockhart/JonBreen/Guy Boncardo)2)Tomoko Namiki(通訳)<図・写真提供>図1、2、写真1、2、3、6 WaterNSW/Sydeny Water/Engineering Heritage SydneyP24上塚本敏行写真4大角直写真5箕輪知佳写真7茂木道夫Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017027