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写真1六本木ヒルズのけやき坂通りまた建築と土木がコラボレーションすることによって、より高次の景観形成が可能になるので「働く領域が広がる」とポジティブに考えたほうがいいです。長谷川:社会資本整備のためにモノを造り続けるのではなく、機能的で良質のインフラ整備を行い、これまで土木が主体的に考えてこなかった「景観や豊かさ」という価値観を持つことも必要になっています。その上で建設コンサルタントとしては品質を確保し、技術力を継承していく役割があります。2020年のオリンピック・パラリンピックの次の50年では、IoT(Internet of Things)やITや技術革新によって、インフラの本質的な考え方が変わり、インフラの寿命も併せて考えないといけません。そういうことを踏まえて、継続的なインフラ整備の中で「土木と建築が如何に融合するか」がキーワードとなるでしょう。公のあり方六鹿:50年間で、建築と土木の両方の分野が絡む事業は結構トライされていて、それが景観や環境に大きな影響を与え始めています。2014年に竣工した虎ノ門ヒルズの場合は、もともとあった道路を40m近く拡幅するために、用地を買収しなければいけませんでした。道路事業は用地の買収に一番お金がかかります。しかし、立体道路制度がつくられたおかげで解決策が生まれました。虎ノ門では道路事業と市街地再開発事業を一体化することによって、虎ノ門ヒルズという建築と土木が融合したユニークな都市景観が生み出されたわけです。建築と土木の境目がシームレスになっています。長谷川:土木技術は、研究開発によって生まれるものと現場での制約の中で生まれるものとが、一体となったものです。今後は制限された規制や仕組みに対しても、虎ノ門ヒルズのような共有の発想で土木と建築の融合を進めることが重要になります。六鹿:市街地再開発事業では細街路があるような場所をひとまとめにして大きな建物を造ったりするのですが、道路の拡幅とか、廃道をして新しく大きな道路を入れたりします。六本木ヒルズのけやき坂通りは、再開発する時にまとめて造られました。この手の融合は道路と建築に限らず、鉄道と建築、水路とか河川とか港湾と建築の開発でも必ずあります。河川でも、流れているところだけを公が持っているのではなく、川の外側まで公の河川エリアです。その部分は商業的価値のほか、市民生活にとってもすごく価値があったりします。その公のところを官と民が調整しながら整備して使います。大阪の幾つかの例では商業的利用をうまく行って、まちづくりの事例として成功しています。計画の段階から先々のことも計算に入れて協議をし、管理する仕組みをつくり、官と民の調整が実利的な結果を出しています。長谷川:土木の概念では、川も道路も公共ですから安心・安全が大前提であり、民間の利用には当然制約があります。川の景観を民間が活用するには、安全も含めた管理体制の問題があります。一方で、高速道路とか街路には2点間を結ぶB/C(費用対便益)という指標があり、都市が整備された後や川の中に構造物を造る場合には、建物を避けたり、川の制約で曲線とか勾配によって費用が増大するため、建物があとに計画される方が合理的になります。六鹿:川の話は歴史的に結構工夫されているところも多く、官と民の調整が行われています。京都の「川床」は夏の間だけ設けられます。上手にできているし、先の大阪の例は、これが大きなヒントだったみたいです。写真2京都鴨川の川床002Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017