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写真4地震直後の様子を残す大聖堂写真5ポートヒルの斜面整備■2016年9月末時点での復興状況地震前までクライストチャーチは「地震のリスクがある街」とは言われていなかった。そのため、ほとんどの建物が耐震補強されていなかった。地震後は外壁にブレース(筋交い)の補強をしている建物が多くなった。液状化と側方流動が起こったエイボン川周辺は、200年程前は沼地で100年程前から整備が進み建物が建ち始めた。タウンホールでは側方流動が起こり、50cm程沈下して傾いたが、地盤改良(ジェットグラウト)で対応した。地盤の締まり具合を判断するN値はニュージーランドでも使われていて、この辺りのN値は5~15だ。また、大聖堂は被災した状態で立ち入り禁止となっている。教会側は安全上から解体して早く新しい大聖堂を建てたいと思っているが、歴史的建物だった大聖堂を残したいとの市民の意見もあり、合意出来ずにいる。さらに、レッドゾーンで政府が買収した土地をどう活用するかについては、色々とアイデアは出ているがまだ決まっておらず、これからの検討課題となっている。クライストチャーチ南東の丘陵地帯となるポートヒルでもレッドゾーンが存在する。そこでは液状化の影響は全くなく、住居移転の要因は地すべり等の斜面崩壊にある。ここでは「生きるか死ぬか」という安全性に主眼をおいたゾーニングとなっている。エイボン川周辺に住んでいた人々の99%は政府の買収を受け入れて移転したが、ここポートヒルにおいては安全上の措置にも係わらず、約700戸のうち80戸がまだ応じていない。それは地震動で家屋に被害があったわけではなく、崖崩れの危険、今後も岩が落ちて来る可能性が高いことを、どうしても実感することができずに家に留まっているためである。岩の最大落下速度は80km/hとかなり速くリスクは大きい。斜面には、豪雨時の斜面崩壊を防ぐための茶色いマットが敷き詰められている。ココナッツから造られていて、水を吸収して土を安定させ、樹木の生育を促進するもので、時が経つにつれて土に変わる。マットはリーズナブルで土埃の舞い上がりを抑制する効果もある。ポートヒル地区では地震による崖崩れが原因で5名の方が亡くなった。中腹の危険な場所の家屋の住民には既に移転してもらったが、麓は安全なのでそのまま生活出来ている。家屋が近接している場合、下は大丈夫だが上は危険だという時の線引きが非常に難しい。住民に納得してもらうための話し合いに時間が必要だ。さらに、斜面勾配も急で複雑な土木工事となるため、コストと時間がかかる。ポートヒルでも政府が買収した土地の利用方法はまだ決まっていない。今後1年で全ての建物を撤去し、その後に地盤の整備に1年程かかる予定だ。そして新しい土地の利用方法を検討し実行することになる。ただし、住宅として使うことだけはもうない。■地震の始まり実は、2010年9月4日に発生した直下型のダフィールド地震(M7.1)が一連の地震の始まりだった。震央はクライストチャーチの西約45kmで、震源は地下約10kmと浅い。クライストチャーチでは強い揺れが長く続いたという。地震後1週間にわたって余震が頻発し、9月8日には大きな地震(M5.1)があり被害が拡大した。市中心部の道路は落下物や瓦礫により通行不能になった箇所もあり、火災も発生している。奇跡的に死者はいなかったが、市内では約500戸が被災した。エイボン川周辺では、液状化による上下水道管や電柱の破損が多かった。この地震の発生直後から、クライストチャーチ付近で040Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017