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Project 2 briefプロジェクト紹介途上国で利用可能な低エネルギー消費型の水質浄化法生地正人KIJI Masato株式会社四電技術コンサルタント環境部副部長■はじめに当社ではダム貯水池の水質改善を目的とした技術開発を行っている。この対策には貯水池内と上流域があり、前者では浮上式フェンス法(水塊分離膜法)を開発し、既に各地のダム貯水池に設置されている。後者のダム上流域においては、未処理で放流されている台所排水や小規模事業場排水の浄化がある。この開発目標は「1広く普及するための低コストでコンパクトな装置」と「2水質浄化能力は有機性汚濁物質(BOD等)のほかに富栄養化対策から総窒素(T-N)、総リン(T-P)の同時浄化が可能」という欲張ったものであった。この対策に傾斜土槽法と名付けて技術開発を行い、技術的な開発目標は達成した。まだダム上流域での普及には至っていないが、開発途上国での上下水処理等への予想外の展開が始まっている。本法は、「水の浄化とは何か」を考える上で示唆に富むものと思われるので紹介する。■傾斜土槽法ダム貯水池から上流の集落を眺めていた時、排水の発生場所から水域に至る落差のエネルギーを水1000図1傾斜土槽20500遮水板傾斜質浄化に利用する発想を得た。また、土壌の表層には生物が多く、自然界で最も自浄作用が強い場所と考えられることから、この表層土壌を切り取って水質浄化に応用する方式を検討した。底面に傾斜をつけた薄層構造体に、鹿沼土やスポンジ等を充填したものを傾斜土槽(図1)と呼び、これを用いた水質浄化法を傾斜土槽法と名付けた。図2のように、傾斜土槽を左右交互に積み重ねることで、コンパクトな装置となる。また、排水の発生点と排水先の落差が利用できれば、無動力で水質浄化が可能になる。■排水浄化事例:台所排水傾斜土槽の3段積みで、一般家庭(4人家族)の台所排水を浄化した(写真1)。計画では5段積みであったが、落差の制約から3段となった。台脚175処理水1000図2多段積み重ね運用写真1台所排水の無動力浄化汚水875所排水は流し台の底部から配管で屋外に出し、流し台から地面(下水管)までの落差を利用して、無動力での浄化を行った。浄化は2001年7月に開始し、毎月の水質調査を4年4ヶ月間継続した。この期間の総処理水量は143.6m 3、日平均処理水量は92Lであり、期間中の担体(鹿沼土)交換等の維持管理は一切行っていない。水質の浄化結果を平均値(原水濃度mg/L、処理水濃度mg/L、除去率)で示すと、SS:153, 34.0, 74%、BOD:819, 85.6, 83%、COD:542,046Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017