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51.2, 80%、T-N:30.6, 5.4, 73%、T-P:5.88, 0.70, 81%であった1)。この結果から本法による有機性排水浄化では、有機性汚濁物質(BOD等)と栄養塩類(T-N、T-P)が同時に浄化され、浄化効果は長期に継続することがわかった。当初計画の5段使用なら、さらに除去率が高かったと予想された。2015年5月に14年間使用した担体の鹿沼土を、全量の1/4を残して残りをスポンジとした。この作業は浄化機構にダメージとなり、翌日から処理水には濁りと泡立ちが発生した。これで洗剤の界面活性剤も浄化されていたことが判明した。この濁りと泡立ちは、2週間程度で無くなり、浄化活性の回復を実感できた。■排水の浄化機構:滞留時間従来の活性汚泥法等の水中での生物学的水質浄化では、原水が装置に流入してから流出するまでの時間となる滞留時間(HRT)が浄化に重要である。標準の活性汚泥法の滞留時間は6~8時間である。傾斜土槽を9段積みとし、醤油製造工場の排水浄化を行った。この実験のBOD除去率と滞留時間の変化を図3に示す。D-BODは溶解性のBODを意味する。本法では30分程度の滞留時間で浄化可能であった。生物学的水質浄化の装置の容量は滞留時間で決定され、本法はコンパクトな水質浄化装置となることがわかる。本法のBOD浄化機構は、まず物理的なろ過と生物学的吸着作用により汚濁物質が水と分離除去され、槽内に捕捉された汚濁物質は時間をかけて本来の浄化(有機物分解)が進む。30分程度の滞留時間で浄化されるのは、主に汚濁物質の水からの分離除去である2)。除去率(%)滞留時間(分)1009080706050D-BOD除去率BOD除去率滞留時間16 36 50 71 85 99 113浄化開始からの経過時間(日)図3滞留時間とBOD除去率■排水の浄化機構:面積負荷量本法は大気からの自然の酸素供給に依存しており、滞留時間の他に表面積が律速条件になると考えられた。生活雑排水を想定した人工排水を用いた浄化実験を行い、水量面積負荷量とBOD除去率との相関式を求めた。これを図4の凡例の赤丸と線形で示す。本法による様々な種類の排水浄化を行った。排水の種類によって、生活雑排水よりも浄化が容易な排水(線形の右側)と、浄化が困難な排水(線形の左側)があることがわかる。図4のX軸を水量面積負荷量から対数表示のBOD面積負荷量としたものを図5に示す。図4の生活雑排水相当の相関式と合致しない排水も、それぞれのBOD面積負荷量と除去率には相関があることがわかる3)。図4で特異的に浄化容易な排水は、高濃度の油脂類(n-HEX、平均78,000mg/L)と懸濁物質(SS、13,000mg/L)を含むドレッシング工場排水であった。水温は流入水よりも処理水が最大で3.7℃高かった。これは内部の微生物反応による発熱であり、水中の浄化ではみられない現象であった。■開発途上国の排水処理開発途上国において電気は貴重50403020100BOD除去率(%)100%90%80%70%60%50%40%30%20%台所排水下水処理場畜産排水食品工場ドレッシング弁当製造工場汚濁湖沼ディスポーザー排水線形(人工排水)風呂・洗濯排水バルク排水食品工場:製麺食品工場:佃煮汚濁水路人工排水食品工場:醤油人工排水の相関式に合致しない。y = -0.0017x + 1.0531R2 = 0.958410%人工排水の相関式に合致しない。0%0 100 200 300 400 500水量面積負荷量(L・m-2・d -1)図4水量面積負荷量とBOD除去率BOD除去率(%)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%y = -0.162ln(x) + 1.0821R2 = 0.94020%1 10 100 1000 10000BOD面積負荷量(g・m-2・d-1)図5 BOD面積負荷量とBOD除去率(凡例は図4と同じ)で、排水処理分野の電力使用の順位は低い。ネパールの首都カトマンズでは活性汚泥法の下水処理場が4ヶ所建設されたが、電力不足で満足に機能せず、3ヶ所は廃止(埋立て処分)され、残った処理場では無曝気での放流も行われている。カトマンズの下水処理場で低電力消費型の下水処理技術として、傾斜土槽法による下水処理のデモンストレーションを行った4)(写真2)。図6にCODcrの浄化結果を示す(BODは測定困難。電力不足で5日間の恒温維持が困難)。冬季の浄化開始となったことで、当初の除去率は低かったが、春季から除去率は上昇し、最終的には約90%に達した。現地の処理場の職員からも、非Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017047