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写真2初降雪日のティンプーブータンの目指すものブータンといえば「幸せの国」と、日本人だけでなく世界の多くの人がイメージしているようです。このようにブータンが注目を浴びるようになったきっかけは、かなり前に遡ります。イケメンで有名な若い今の国王の父ジグメ・シンゲ・ワンチュク第4代国王が、1976年にスリランカの首都コロンボで開かれた第5回非同盟諸国首脳会議の記者会見で“Gross National Happiness is moreimportant than Gross NationalProduct”と語ったことに端を発しています。「経済発展はブータン国の究極の目的ではなく、GNH(国民総幸福)の向上こそがブータンの目指すことである」と世界に向けてメッセージを発しました。当時は国王も即位後間もない21歳の最年少国家元首であったためか、GNHはきれいごとの理想論としかみなされなかったようです。2006年になってイギリスのレスター大学の研究者が、当時はかなり抽象的な概念だったこのGNHの視点から「世界幸福地図」を作成しました。これによれば、178ヶ国中の上位をデンマークやスイス等の西欧諸国が占め、ブータンがアジアで唯一10位以内の8位に入りました。ちなみに日本は90位でした。一方で1980年代以降、途上国でも経済発展に伴う様々な問題が顕在化してきたことに伴って、このGNHが注目されてくるようになりました。1981年には元世界銀行の経済学者が「持続可能経済的厚生福祉指数」と呼ばれる指標、要するに家庭の消費財支出を出発点として無報酬の家事の価値を加え、公害等の社会的費用を差し引いたものを提唱し、この流れから「グリーン経済」等が最近注目されてきているのかもしれません。GNHのその後はというと、ブータン国の2013~2018年までの第11次5ヶ年計画には、通常の経済指標とは別にGNHの運用に向けてという項目があります。2010年の調査結果では、健康、時間的ゆとり、教育、文化的多様性、グッドガバナンス、コミュニティの活性度、生態的多様性、生活水準というような合計124の項目で、全国20県毎のGNH指標も記述されています。GNHが今後どのように実際に運用されていくかに注目したいと思います。「発展とは何なのか」を考える時の代替尺度になるかもしれません。パサカ工業団地今回の仕事は日本のODA事業として、ブータン国南部の経済特区開発(工業団地建設)における環境配慮に係る技術支援でした。環境社会影響評価に関する世界基準と言われている世銀セーフガード政策とこれに準拠しているJICA環境社Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017051