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います。土木構造物では100年以上機能しているものも沢山あります。古いから価値があるというのではなく、自然の中に長く存在して機能を保っている、それは必要性があって存在しているのです。六鹿:建築はいま100年建築とか標榜するのは当たり前です。100年建築は構造や設備の材質を考えれば、造ることができます。しかし建築は街の骨格の上にあるので、都市計画の制度や道路事業によっては超高層がいともたやすく壊されてしまう時代です。つまり圧倒的に土木のほうが強い。土木が100年とか永遠のインフラでない限りは、建築というのは砂漠の蜃気楼のような存在です。長谷川:これからのインフラ整備は良質で機能的なものが求められます。構造美と機能、デザインも含めコストと安全性をどう考えていくかに集約すると思います。稚内にアーチ状の波受け構造(北防波堤ドーム)として数百mの道路があります。明治時代のものですが、現在、同じものを造ろうとしても造れません。ものづくりやコストの概念が当時とは違っているからです。でも後世に残るものは、美しいデザインも含めて機能していることに感動します。六鹿:役割をほぼ終えている京都の東山のインクラインやアーチなども観光の対象になっています。ヨーロッパにはローマ時代の水道橋が多く残っていて、観光資源になっています。長谷川:素晴らしい土木構造物が観光資源になるのは、その構造物の価値を認められたことも含めて、我々にとっても嬉しいことです。土木でも造るときの機能美も含めて、美しいモニュメントになれば、建設や土木が魅力ある職業としての理解が得られるという観点で、土木の景観やデザインも重要だと感じます。六鹿:それぞれの時代でその価値観を反映した大切な建物や土木構造物が、今見ると歴史遺産になって、ツーリズムの対象になっています。機能美を求めて、機能だけで造るのもデザインなのです。魅力ある職業へ六鹿:建築と土木はノウハウで相当重なっているところがあります。同じような頭の働かせ方が多い気はします。日本の大学教育では歴史的に建築と土木が分かれていますが、海外ではシビルエンジニアは土木から建築まで境目なく、構造設計を全部行うわけで、本来重なりうるのです。若い人たちに海外に目を向けさせるということと、建築と土木の境界を取り払って都市というところ写真4京都東山のインクラインで融合させるといいと思います。都市開発とまちづくりには文科系の人も入ってきます。色々なデベロッパーがまちづくりをやっています。建築や土木も含めたフィジカルなものの開発であると同時に、開発されたものを長期にわたって街として魅力を高めるための、いわゆるタウンマネジメントを考えるわけです。建築や土木の大学教育では必ず設計課題があり、それはすばらしい訓練になります。一定時間に一定のリソースで、あるビジュアルな結果を出さなければいけない。建築や土木で勉強すると、プロジェクトマネジメントの初歩が身につきます。えなん長谷川:土木という言葉は歴史的に古く、中国の『准南じ子』にある「土を築き木を構えて以て室屋と為し」が語源で、素晴らしい名称だと思います。一時期、土木という名称を都市環境とか建築にすり替えたのですが、私は土木という名称は永遠に残すべきだと考えています。英語で土木工学を表わす「シビルエンジニアリング」は、市民のための公の工学や技術であり、我々はそのことに誇りを持たなくてはなりません。建設コンサルタントの中にも建築があり、土木と一緒に基盤開発とかマスタープラン、まちづくりで協働しています。建設コンサルタントが一度、プロジェクト抜きで、若い人や女性と交流し、協働をしてみてはと思います。若い人同士であれば既成概念がなく、土木と建築の融合に有効だと思います。六鹿:若い人はどんどん変わっていくので、交流や協働が非常に大事かもしれません。長谷川:若い人に責任を持つのも我々の責務で、国内外で素晴らしいプロジェクトをして、若い人も多く活躍できる職業であることが重要です。建設コンサルタントの実情は、平成7年にいた多くの若い人が、その後の20年で1/3になってしまいました。そのため平均年齢が50歳近くまでになり、若い人の減少を65歳以上の人が支える004Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017