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平成28年度WAVE・JCCA欧州インフラ事情調査に参加して視野を広げる─欧州インフラ事情調査に参加して─株式会社建設技術研究所東北支社まちづくり推進室女川CM事務所千葉雄一CHIBA Yuuichi■はじめに欧州インフラ調査に参加し、日常的に目にする光景と異なる空間に身を置くことで、空間的な視野を広げることができた。さらに、現地に行く前に事前調査を行い、更に帰国してから疑問に感じたことなどを調べることで、時間的な視野を広げることができた。以下に私がこのように感じた幾つかの事例を紹介したい。■環境先進都市フライブルクは、なぜ、実現できたのかドイツ南西部にある環境先進都市フライブルクを訪れ、環境的な様々な取組みを目の当りにして、正直、感嘆した。フライブルクが行っている環境的な取組みの数も然ることながら、全体として一本、筋の通った施策が、効果的に実施されていると感じたからである。例えば、中心市街地を貫いていた幹線道路を市街地の外周に切り替え、市街地の静穏化を図ること、店舗前の道路を歩行者専用道路にするために車両を乗入させない試行を行い売上データを基に店主を説得し順次拡大させること、また、街中に「ベッヒレ」と呼ばれる水路を引込むことや空中緑化により自然を感じられる空間をつくることなどが行われていた。このような環境的な取組みは、実現するために、様々な苦労、労力が必要であったはずである。環境的な取組みの特徴として、一部の人は、環境や景観を優先すべきと、日本でも当然のように運動がおこる。しかし具体化して行く中で利害関係の顕在化や追加的な費用の問題などで、なかなか実現できないという状況に陥ってしまう。これは、首長や政治家が選挙という複数人の総意によって選ばれるという制度的な側面に起因することも大きいと考える。フライブルクでは、なぜ、環境に配慮された「まちなみ」をつくり出すことができたのか。その背景には、フライブルクでは1970年代に原発計画が持ち上がり、その計画に対して、住民反対運動がおこり、計画中止になった歴史がある。ことのとき住民は必死に抵抗したと想像することができる。その歴史に基づく住民の記憶の中に苦労を伴っても環境を優先するという総意が潜在的に形成されていたことが、このようなまちを実現することにつながったのではないか。この町の歴史を理解することで目の前に広がる風景を起点とした時間的な視野を広げることができる。写真1環境都市フライブルクの中心市街地■ヨーロッパには、なぜ、古い街並みが残されているのか写真2は、フライブルクの旧市街の建物の写真である。この建物は、戦火により焼失した建物の外観を当時と同じ形状に復元したとの説明を受けた。さらに、このように戦火で焼失した建物を復元する建物もある一方で壊される建物もある。その場合には、相当、議論がなされたうえで、建替えが進んでいるということであった。私は、帰国後に社内で、今回、視察したヨーロッパの各都市では、古い建物や町並みが保存され統一的な町062Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017