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並みが、とても綺麗であったと報告したと。この発言に対し「なぜ、ヨーロッパの人たちは、そのように考えるのか。そこが重要だ。」と指摘された。古い街並みを残したり復元したりすることは当然であり、その理由を考えるということをしていなかったため、すぐにその答えは、思いつかなかった。その問いかけの際にヒントも頂き「大写真2フライブルク戦火焼失建物の復元写真3ベジエ運河橋(17世紀建造)石久和氏の著書に述べられている。」とのことであった。中で、維持管理費が輸送量に比例して増大することに早速、書籍を探し「国土が日本人の謎を解く」にその答対して、水路は、重量や輸送量の増大に対して維持管えを見つけることができた。技監やJICE理事長を務め理費が逓減することを説明していった。られた大石氏の著書には、日本は、地震や津波など、自また、その整備を民間ではなく、公共が行う必要があ然災害が多い国土であり、これに対して、ヨーロッパは、ることへの説明が求められ、これに対して、鉄道等の民自然災害が稀である。このため、日本は、「流れていく歴間事業は独占が起こり、市場の原理が生きない現象(市史」という観念を持ち、「変わること」を尊ぶ文化がある。場の失敗)が発生することなどを経済学的に説明してい一方、ヨーロッパは、「積み重なる歴史」を経験しているったそうである。このように優秀なエンジニアがエンジニが故に「変わらないことを大切にする文化」があるといア・エコノミストへと発展して行った背景には、その事業うことが述べられていた。このように災害に対する死生の説明責任を果たすという必要性から生まれた。翻って、観が、まちの景観を左右しているということに納得する数百年後の現代、我々、建設コンサルタントが係わっていとともに、日本もヨーロッパのまねをするのではなく、日るインフラ整備についても、その効果を適切に説明する本の文化や思想に基づいた、まちづくりを将来にわたっことや公的な資金を投入することに対して有用性を説明て行っていく必要があり、まちづくりに様々な側面で関する努力が継続されて実施されており、今回の視察団団与する、我々、建設コンサルタントの役割は、大きいと再長の中村英夫先生を初めとした、諸先輩方の「道路投資認識した。の社会経済評価」などの業績に繋がっている。■土木エンジニアは、どのような役割を果たしたのかフランス南部のミディ運河を視察した際にベジエ運河橋(写真3)を見た。この建造物は、17世紀に建てられたものであり、精度の高い測量技術と高度な施工技術で建てられ、建造物として素晴らしいものであることは、遠くからみてもすぐに理解できた。運河橋の建設された時代背景を調べてみると、東京女子大学栗田啓子教授の論文に背景が論じられている。当時、運河建設は、公共事業として行われたが、その事業の妥当性を説明する必要が生じ、エンジニアは、経済の分野にその活動範囲を広げ、エンジニア・エコノミストとして、その役割を拡大していったそうである。なぜ、今で言う、事業評価、費用便益分析を実施する必要があったのかというと、当時、運河の建設費が増大する中、道路や鉄道の整備が進み、これらの輸送手段に対する優位性を説明することが求められたからである。これに対し、当時のエンジニア・エコノミストは、道路は、重量物(石炭や鉄鋼)などの輸送が増えて行く■欧州インフラ事情調査を終えて私は14年前、「まち」が「自然」との関係をどのように築いているのか体感することを目的としてイギリスの田園都市「レッチワース」を訪れた。さらに直径1kmの城壁に囲まれた「まち」で「人々」はどのように生活しているのか、生活に必要な空間とは、どのように捉えたら良いのか確認したいと考えドイツの小さな町「ネルトリンゲン」を一人で見てまわった。この時の経験は、その後、建設コンサルタントとして仕事をしていく中で、潜在的に影響を与えてくれていたと思う。しかし、その後は、日々の業務に没頭し、外の世界を見ることを忘れていた。そのような中、今回の海外調査に参加することができ自身の視野が狭くなっていることに気付くとともに、所属(会社)、経歴、分野、経験等が異なる方々と時間を伴にすることで、このような人々と接する大切さについても、再認識することができた。これからは、時々立ち止まって、視野を広げることを心がけて行きたい。Civil Engineering Consultant VOL.274 January 2017063