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写真3 SLの動態保存の先駆となった大井川鉄道(千頭駅、2017年写真49月、1975年に現役から退いたSLだが、動態保存が要望され、1977年からSLの営業運転を行なっている)レトロ調に新造されて観光地で運行されている巡回バス(群馬県草津町、2 0 17年6月、最近はバス車両の規画化で少なくなっている)真岡鉄道等でSL列車の運転が始まり、鉄道が観光の一端を担うようになった。JR以外は集客力の高い関東周辺が多いが、鉄道が観光客の誘致と地域活性化に果たす役割は大きい。また、車内や沿線の風景を満喫できるリゾート列車やトロッコ列車を運転する鉄道・線区が増えている。一方、都市域を母体とした地方の自治体の多くは、平成の市町村合併により、観光スポットや温泉も含めた農山村地域まで包括する傾向になった。また、鉄道事業者の観光開発が下火になるなかで、地方創生の一環として、観光活性化政策が重要な課題になった。その流れの一環として、鉄道駅から離れた観光地へのアクセスとして、自治体がシャトルバスや観光タクシー等、観光周遊バス等を運行する地域が増えている。この種のバスは、当初はやりだしたレトロブームやアンティークの流れを受けて、ボンネット型やレトロ調で新造する傾向が見られた(写真4)。しかし、利用が減少し続けるバス事業の不況は、車両製造も画一化へ向かい、ユニークな車体のバスは、次第に影が薄くなっている。近年は、JR九州の「ななつ星」などに端を発する豪華な観光周遊列車や新幹線のグランクラスが、広く周知され始め、高齢の富裕層だけでなく、豪華な交通観光旅行が普及しつつある。このように、交通機関に乗って楽しむ移動も観光の一環となり、それが鉄道会社や自治体の地方創生の目玉になる傾向も強まっている。なお、こうした第二次世界大戦後のめまぐるしい各交通手段のモードごとの盛衰のなかで、各々の輸送人員は、大きく増減してきたと考える。しかし、表2を見る限り、1950~1970年代に自動車と航空機の急増が見られるものの、1970年代後半以降、大きな変動はなく推移してきた。増減は生じていない。輸送人キロも同様の傾向であり、そのことは、輸送需要のベースの部分が増大してきたため、傾向が表れる大きな割合の変動に至らないものと考えられよう。おわりに本稿では、近代以降のわが国の交通手段の変遷を、特徴やキーワードを記載して、5期に分けた区分表を作成した上で、各期の概要を考察した。筆者が主に研究を進めてきた地方鉄道や路線バス等の陸上公共交通を主体としながら、航空や道路等も含めながら考察した。そのため、記述が断片的となり、連続性が不透明な事項や、重要な事項でも記載が漏れている部分もあると思われる。また、5つの区分についても、その数や内容、区切りの時期数等も、一つの試案としての記述なので、各界の読者の方々は、各種の交通手段の変遷概要やそれらの時代背景の一端を思い起こし、日本の交通史の一端を垣間見ていただければ幸いである。<参考文献>1)復刻版も含めた『時刻表』(日本交通公社)2)日外アソシエーツ編集部編『日本交通史事典トピックス1868-2009』(2010年、日外アソシエーツ)3)原口隆行『絵葉書に見る交通風俗史』(2002年、JTB)4)平山昇『鉄道が変えた社寺参詣』(2012年、交通新聞社)5)白川淳『鉄道博物館データブック』(2013年、鉄道図書刊行会)6)武部健一『道路の日本史』(2015年、中公新書)7)老川慶喜『鉄道と観光の近現代史』(2017年、河出ブックス)8)大島登志彦『群馬・路線バスの歴史と諸問題の研究』(2009年、上毛新聞社)全頁9)大島登志彦「観光地における路線バスの意義・役割とその変遷」『観光地への公共交通アクセスの変遷と役割、効果に関する調査研究』(2017年、日本交通政策研究会)Civil Engineering Consultant VOL.280 July 2018017